雨上がりの霧 -2022.04.25 - セントレア~西日本

GW 目前はそろそろ秒読み?、梅雨

 雨は上がりましが、空模様はあまりすっきりしませんね。不快に思うほどの湿度ではありませんが、日中の気温が徐々に高くなっていることもあり、身体を動かすとむっしりとした暑さを覚えます(東京の話です)。

 この数日、本州はちょうど前線を伴った低気圧の通り道になっていることもあり、晴れが長続きしませんが、地上天気図に描かれる前線の位置を見ていると、明日 4/28 には、九州南部~八丈島南に、梅雨の気配を感じさせる東西に長々と伸びる停滞前線が描かれています。沖縄や奄美地方と言えども、今年はまださすがに梅雨入りしていませんが、両地方における昨年令和 3 年の梅雨入りは 5/5、そろそろ梅雨入りも間近そうですね。

www.data.jma.go.jp

 

雨上がりの霧

 立ち上る霧、たなびく霞。雨上がりには、様々な人が詠じた情景が広がりますが、霧もそうした景色の一つです。摩周湖、ロンドン、霧で有名な場所には色々あるかもしれませんが、その中には、一部の空港も挙げられます。もちろん、年中あるいは四六時中霧に見舞われるわけではありませんが、時々そういうことがあります。おととい 4/25 朝は、そんな稀な朝となりました。

 前日 4/24 は、停滞前線上を東進する低気圧の影響を受け、中部国際空港セントレア)では日中雨が降り続きました。雨は夜には上がりましたが、日中の雨のため、湿気満載で夜を迎えました。そして明け方、4/25 午前 7 時前後に見通し距離が最も悪くなり、その後日照と共に解消してゆきました。興味深いのは、この日、中部国際空港のみならず、西日本の多くの海沿いの空港(大分、長崎等)で、稀に見る低視程が報じられた日となったことです。中部国際空港の当時の気象通報は以下のようでした。

 

METAR RJGG

4/25 午前 5:30 - 8:00

242300Z 27003KT 3200 BR FEW010 17/17 Q1015 BECMG 6000 NSW=
242230Z 27004KT 1600 R36/1800U PRFG BR FEW000 16/16 Q1015 BECMG 4000 BR=
242200Z 24003KT 0600 R36/0150N FG FEW000 16/15 Q1014 BECMG 3000 BR= 
242130Z VRB01KT 0900 R36/0125V0550D FG FEW000 SCT030 16/16 Q1014 BECMG 3000 BR= 
242100Z 36003KT 0600 R36/0350V0550N FG FEW001 SCT030 15/15 Q1013 BECMG 1500 BR=
242030Z AUTO 33004KT 1300 R36/1400V2000U BR BKN030 BKN042 15/15 Q1013

4/24 午後 10:00 - 4/25 午前 3 時

241800Z AUTO VRB02KT 1800 BR FEW026 BKN032 BKN046 16/16 Q1012 NOSIG=

241500Z AUTO 30002KT 3200 BR BKN049 16/16 Q1012 NOSIG=

241400Z AUTO 34004KT 4800 BR FEW036 BKN050 15/15 Q1012 NOSIG=

241300Z 31003KT 7000 FEW009 SCT012 BKN025 16/16 Q1012 TEMPO 4000 BR FEW004 BKN008

 

 夜半から早朝に向け、徐々に視程が落ちています。おそらく海に比べてやや温度が低くなった陸からの風が、やや暖かい海上から発生する水蒸気を冷やしたことで、視程を落とすこととなったと思われます。風は確かに微風でしたが、一晩という時間をかけ、明け方に向け視程は落ちて行きました。そして午前 5 時過ぎに日の出を迎え、陽の光の反射などを受け、日の出から 2 時間後に視程は最低値を記録し、しかし日射と共に地表が暖められることにより、霧は解消してゆきました。

 

 ちなみに長崎では以下のようでした。

SPECI RJFU 242210Z VRB02KT 0300 R32/0500VP2000D FG VV002 15/15 Q1014 RMK A2995=   
SPECI 242208Z VRB02KT 0400 R32/0500VP2000D FG VV002 16/16 Q1014 RMK A2995=

241200Z VRB02KT 9999 FEW030 18/17 Q1012=

 

蒸発(蒸気)霧と海の塩

 霧はその発生原因によって、放射霧、前線霧、蒸発霧など 4、5 種類に分類されます。先に書いたように、今回の場合には、ただでさえ飽和していた大気に、さらに海の水蒸気が流れ込むことで起こったと考えられます。そして、日射により空港の路面が温まり、海からの水蒸気の流れ込みが止まり、大気の飽和水蒸気量が大きくなり、朝霧は解消へと向かいました。

 また、海面上には水蒸気の核となる塩分が十分あることもあると思われます。

 中部国際空港にも、低視程になった時に運航を行う地上設備が完備されてはいますが、このような気象状況を目にしたのは、個人的には 2 度目でしかありません。地元に住んでいる方も、霧で車を運転するのにこの日のように気を遣ったことはあまり記憶にない、と話していました。

 

朝霧は晴れ

 朝霧は晴れ、という言葉通り、4/25 は青空に恵まれました。日中晴天に恵まれる霧は、正確には放射霧の場合のみですが、放射霧が出来るのは、雨の後、放射冷却が起こるような晴天域が近づいてきているためです。

 霧が天気の変化の彩りであるうちは素敵ですが、自然現象の程度が激しくなりつつある近年、災害や不安全事象の遠因になって欲しくないものですね。

 

 本日も最後までお付き合いありがとうございました。

青もみじ - 新旧の句切り -

青もみじ

 外で過ごすのが心地よい日が本当に多くなってきました。良い季節はどんどん過ぎて行きます。今月初めには桜に心躍っていたのがすでに遠い昔のことのようです。先日 20 日に暦の上でも穀雨を迎え、春も終わり、間もなく夏が始まろうとしています。

 そして今目に留まるようになってきたのは、薄黄緑色の新緑です。桜と同様、季節の移ろいを感じる場所は皆さんそれぞれあると思いますが、紅葉と並んで新緑が綺麗な場所には、やはり神社やお寺が挙げられるでしょうか。

 個人的には例えば、京都市今出川にある相国寺内の承天閣美術館前の紅葉、青もみじには、足を運ぶ度に感動しています。美術館入口前のほんの数十メートルなのですが、お寺の中でもひときわ静謐で、季節感溢れる空気が流れています。

www.shokoku-ji.jp

 

ライブラリの維持って、あまり楽じゃないのかもしれませんね…

 ここからはただのボヤキです…。

 よく分かりませんが、Cartopy が使えなくなりました。去年一年間の台風のデータが出ていたので、それを図示しようかなと思ったのですが…。import の段階で、エラーメッセージが出るようになりました。

 以前、Basemap から Cartopy に引っ越しした時のことを書きましたが、Cartopy にして以来、特に GRIB2 形式を使う時に、どうも細かい不調が絶えません。Metpy も一部使えなくなったり、pygrib のエラーが稀に出たり。それ以外の場面では、python もいたって元気に動いているのですが…。

 ライブラリの維持(というか、バージョン同士の管理、組み合わせの把握)は、あまり安易なものではないのかもしれませんね。少なくとも、色々なアプリのアップデートと同様に扱うのは、安直なのかもしれませんね。

 ということで当面、Cartopy、GRIB2 ファイル関連の作業は休業することとしました(まあ、それほど大したこともしてはいないのですが)。そもそも気象庁の航空気象情報がどんどん使いやすくなっています。

www.data.jma.go.jp

 

 今日は文字通り、個人的なぼやきになってしまいました。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

 

陽炎の揺らめき - 2022.04.10 -

 この週末、日中は半袖がちょうど良い位の初夏の陽気でしたね。窓を開けて部屋にいても、屋外で風に吹かれても、それだけで心地良い幸せな休日が出来上がりです。

 

陽炎に揺らめくドーム

 海は私にとって、それほど頻繁に行くことのない非日常空間です。波の音を聞いて、海風に吹かれるだけで(海に入らなくても)満足です。砂浜沿いをジョギングすることが出来れば、もう何も言うことはありません。福岡市西区には、その非日常性をより一層際立たせてくれる場所があります。マリナタウン(愛宕浜地区)海浜公園です。

www.marizon-kankyo.jp

 4/10、午後一時を回り、日に日に強さを増す陽射しに砂の上では陽炎が揺らいでいました。揺らいだ先には福岡ドーム。チタンの屋根で茶色のはずですが、午後の陽射しを受けて金色めいてもいます。青い海に広がる砂浜、その先に不規則に小さく揺れて見える金茶色のドーム。このエキゾチックさは、砂漠のオアシス、あるいは遠い聖書の世界をちょっと思い出させる気がします。

 

福岡市の AMeDAS

 福岡市には AMeDAS(自動気象データ収集システム)が 2 ヵ所、福岡空港大濠公園横の福岡管区気象台に設置されています。どちらも海から遠くないものの、海岸自体のデータを観測しているわけではありませんが、海風が心地良い昨日 4/10、大濠公園横では午前 10 時から弱い北寄りの風となり、福岡空港では午後 1 時から、それまで南寄りの風から北寄りの風に変わりました。実際、午後 1時過ぎに特別航空実況報(SPECI)が発表され、滑走路は北風運用となっていました。

RJFF 090500Z 31013KT CAVOK 25/06 Q1016 NOSIG=
RJFF 090430Z 32006KT 290V360 CAVOK 24/01 Q1017 NOSIG=
SPECI RJFF 090409Z 28010KT CAVOK 24/02 Q1017 RMK A3003=
RJFF 090400Z 15009KT 130V190 CAVOK 25/04 Q1017 BECMG FM0500 32010KT

 

揺らめく先に感じるもの

 陽炎は、天気の良い日などに、日射により地面が暖められて不規則な上昇気流が発生し、密度の異なる空気が混じり合い、そこを通過する光が不規則に屈折することによって、地面から炎のような揺らめきが立ち上って見える現象で、もともと春の季語です。当然ながら、熱による上昇気流が発生している間だけの現象ですが、揺らめき、長く続くわけではないその性質は、現実における流転、あるいは無常さと親和性が高いのかもしれません。

 丈六に 陽炎高し 石の上 (笈の小文 

(石の台座の上にかつてあったであろう丈六の仏像はもはやなく、春の陽に燃え立つ陽炎が、時の仏像の面影を偲ばせるばかり…。)

 ほとんどのものは時を超えることが出来ないからこそ、たとえそれが不完全なものだとしても、長い時間を経て残るものに意味や希望を見出そうとするのかもしれませんね。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

地上の高気圧、上空のトラフ - 2022.04.08 -

朝焼けも夕焼けも素敵でしたね

 ソメイヨシノは、花びらの桜色よりも、黄緑色の葉の方がだんだん目立つようになってきました。春真っ盛り、あるいはそろそろ夏の声も聞こえてきそうな爽やかな季節がやってきました。昨日 4/9、昼間は長袖でなくても良いのでは、と感じるような気温でしたし、一昨日 4/8、東京でも、朝焼け、そして夕焼けのいずれも、息を飲むような澄んだ地平線が広がっていました。

 4/8 の地上天気図の推移を見てみると、朝鮮半島南の高気圧、そして日本海に中心を持つ高気圧が、それぞれ東南東進、東進して、東北地方以南の本州域は高気圧にどっぷり覆われている一日でした。航空機の巡航高度帯も、ほとんど揺れはなく、いかにも高気圧圏内の飛行と言う、申し分のない安定した状況でした。

 

たまには公式の解析図を眺めましょう

 いつもは気象庁の高層気象データをお借りして、自分の見たいデータを見たい形にしていたのですが、私がわざわざそんなことをしなくとも、気象庁では当然ながら、航空や海上用など、各種専門天気図を発行しています。ただ、そうした解析図にない部分や、見たい部分を強調したいという個人的希望、趣向のため、このブログでは見慣れない図でデータを眺めてきました。ということで、今回は公式の解析図を眺めて、当時の状況を振り返ってみることとします。

 過去の専門天気図は、これまでも何度か(勝手にですが)リンクを張らせて頂いた、以下のサイトからお借りしました。

www.sunny-spot.net

 眺めてみるのは、

① AUPQ 35 アジア 500 hPa 300 hPa 解析図

② AUPQ 78 アジア 850 hPa 700 hPa 解析図

③ AXJP 140 高層解析図(東経 130°、140° の大気の断面図)

の 3 枚です。(興味のある方は、4/8 午前 9 時(00Z)のそれぞれの図をご覧頂ければと思います)

 

地上の高気圧、上空のトラフ(気圧の谷)

 上空の大気の状況は、地上の高気圧、低気圧の状況がそのまま反映されるわけではもちろんありませんが、高気圧の進行方向後面はあまり安定せず、何となく揺れることが多いなど、無関係とは全く言えません。高層天気図からは、地上の高気圧や低気圧が全く窺えないとしてもです。

 4/8 は、関東から西日本は、地上では確かに高気圧圏内なのですが、上空は、日本海上空が気圧の谷となっていました(①、②)。もっとも、この上空のトラフの影響は、どうやらせいぜい秋田位までであったようで、それより南では不安定とはほぼ無縁の状況でした。そして、秋田は、概ね地上の高気圧北限に位置していました。

 もっとも、関東から西日本の全ての高度帯で揺れが無かったわけではありません。24,000 ~ 27,000 ft 辺り、気圧高度で言えば 400hPa 前後は、ジェット気流の前線帯と言えそうな高度帯であったようで、唯一、この周辺で一時的に揺れがありました(③)。もちろん、冬場のように Vertical Windshear が予報されるような、顕著な風速差があったわけではありません。また、上空のトラフは、対流圏界面であった 260 hPa を超えるとはっきりしなくなり始め、200 hPa ではほぼ見受けられなくなります。

 

400 hPa という気圧面高度 ~ この高度を振り返りたい理由 ~

 公式の専門天気図では 400 hPa は無いのですが、400 hPa 周辺という気圧面周辺の高度は、上空の前線帯の影響を受けるか受けないか、という境界となる場合が少なくなく、定時性の確保や快適性の担保という運航における実用的見地から、その状態を知りたい、再確認したいと思うことがままあります。それが、私が自分でデータを加工しようと思う理由だったりします。

 まとめると、4/8 の関東から西日本上空は、日本海上空のトラフの影響をギリギリ受けない、そして、水平方向にも鉛直方向にも風速変化の大きくない太いジェット気流の中に位置しており、それは地上の高気圧配置に概ね対応していた、と言えるのだと思います。

 

 今回も、データも図も無し、言葉だけの振り返りになってしまいました。天気は水平方向にも鉛直方向にも広がりを持つ現象なので、色々な図を見比べながら、目の前の現象にあれこれ思い巡らすことが面白いと感じるのは、やはり個人の趣向の問題でしょうか…。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

高気圧の狭間 - 2022.04.03 -

過ぎつつある桜の盛り

 桜、楽しんでいらっしゃいますか、それともこれからでしょうか…。

 東京では、桜の開花発表から半月余りが過ぎ、ソメイヨシノはすでに盛りを過ぎつつあります。

 こうしてみると、桜の楽しめる期間はそれほど長くないにもかかわらず、その間の天気の移り変わりには目まぐるしいものがありました。今日も午前中までそうでしたが、曇ったり、寒さがぶり返したり、雨に見舞われたり…。麗らかな春のお花見に適した時機があることは間違いありませんが、それは思っているほどは長くはないものなのかもしれません。何となく、人生とだぶるようで不思議な思いがするのは、やはり歳を取って来たからでしょうか。

 色々なことが素晴らしく噛み合い、形となる瞬間があることは確かですが、一つや二つ、もう少しこうだったらいいのに、と思う中でしか時間を過ごせないことは実に多いものです。むしろ、その方が普通なのかもしれません。

 これからの方が短くなってみて、あるいは、当たり前だったものを失って初めて抱く感慨。桜の盛りと紛争の同時進行する世界の底辺には、危機が叫ばれて久しい気候変動がというものも横たわっています。来年も同じように桜の時期を迎えることが当然であるよう願うばかりです。

 

冬既に遠く、春の只中なれど

 昨日 4/4 の最高気温は、晴れた札幌の方が雨の東京よりも高くなりました。札幌もすでに冬は遠いもののようです。

news.yahoo.co.jp

 昨日 4/4、東京に雨を降らせた雨雲は、前日にはおそらく中部地方で雨を降らせたものですが、4/3 の中部・紀伊半島~関西地方は、地上天気図には高気圧と高気圧の狭間に位置していました。

 天気図からは、晴れではないものの、それほど悪天には思えなかったのですが、実際には、地上は時折小雨の降る一面の曇天、紀伊半島上に雲頂はそれほど高くないものの、結構揺れるモクモクした対流雲が形成され、また、ジェット気流下の前線帯でははっきりした雲底が形成され、中程度の揺れが報告される、正直なかなかの悪天でした。もっとも、ジェット気流の強風軸高度を超える高さでは、全くと言っていい程揺れの無い、穏やかな状況となっていました。

 風向も変化か大きく、地上では北寄りの弱い風、対流雲の形成されている紀伊半島上空では、中心が東に位置する高気圧の周辺を流れると思われる南風が吹き、その南風が地上の北風に変わるところに雨雲が低く形成されていました。

 低層では地形や地域特性を主とした傾向が、中層では地上の気圧配置を形成する気団の特徴が、そして上空では地衡風の特徴がはっきり見受けられる、なかなか賑やかな一日だったのです。

 

潮岬のラジオゾンデは?

 地上から上層まで、こうした賑やかな状況になっていると、ラジオゾンデの観測データを見てみたいと思うのですが、ここしばらく潮岬のラジオゾンデの気象データが取れなかったりします(残念)。自動放球による観測地ですし、工事中か何かなのでしょうか。気象庁の『過去の気象データ検索(高層)』のお知らせには何もないようなのですが…。

 まあ、そのうち使えるようになるのを楽しみにすることとします。

 

 観測データの全くない、日々の天気の振り返りになってしまいました。画像や動画で伝える現代に全く逆行していますね。

 本日もお付き合いどうもありがとうございました。

春の天気は速く大きく変化する - 2022.03.21 - 東北地方における気圧の谷の東進

春の雪

 おととい 3/20、東京でも桜の開花が発表されました。上野の不忍池東京芸術大学でも、蕾が綻び桜色の花びらが見えていたり、あるいは日当たりの良い所では、すでに2、3 分咲いている木もあります。ということは、平均的には、来週半ば以降が見頃ということになるのでしょうか。

 しかし、本格的な春の訪れを感じさせる桜の開花が報じられると、どういうわけか、急に季節が逆戻りしたかのような寒の戻りに見舞われることがよくあります。実際、今日の東京は天気予報通り、昼前後を中心にしばらくの間結構雪が舞っていました。同じ雪が降るとしても、「春の雪」と言うと、身を屈めるのではなく、顔を上げ空を仰ぎたくなるような想いに駆られるのは私だけでしょうか。

 

電力需給ひっ迫警報

 もっとも、暖かさに慣れてきた後の寒さのため、今日 22 日は電力需要のひっ迫が予想され、節電要請が行われています。先日 16 日の福島県地震の影響で、福島県の火力発電の稼働が停止しているためとの事です。

www.meti.go.jp

 経産省がこの警報を出すのは初めてのことのようですが…、世の中には色々な警報があるものですね。やはり、東京圏の生活規模が依然として大きいのでしょう。

 東日本大震災直後には、原発の影響を懸念して地方に移住するということを少なからず耳にしました。現在のコロナ禍では、テレワーク拡大等で住む場所に関する選択肢が増え、東京から転出増加が指摘されていますが、落ち着きを取り戻した時、結局どのような姿になっているのでしょう。

 

春の天気は速く大きく変化する

 春は、暖かさや目に映る彩りが日ごとに増して行くことに気持ちが向いていますが、今日のような寒さや悪天にもそれなりに見舞われます。実際、先日 18 日から 19 日もひどい雨でした。これはこの時期、本州付近がちょうど移動性の高気圧・低気圧の通り道になっており、発達した低気圧が通過したためです。

 例えばこの数日間の地上天気図をご覧頂くと分かるように、移動性高気圧は時速 20 ~ 35 km 程度、つまり一日で 500 ~ 900 km 移動するので、天気もその速さで変化します。また、真冬並みの寒気と同時に、南の暖気もしっかり流入するようになるため、寒暖の差が急激です。洋服で上手に寒暖の調節をして下さいと言われるのはそのためでしょう。

 そして、この速く大きな大気の変化は、上空の大気にも当てはまります。春の飛行機の旅は、予想以上に揺れることが多いのです。

 

上空の大気の 12 時間における変化

 3/21 は朝鮮半島から移動性高気圧が東進しており、関東から東北は晴れ、ないし曇りの春らしい一日でした。もっとも、高気圧の東進に伴い、上空では気圧の谷が通過しており、高度 31,000 ft および 36,000 ft に中心軸を持つジェット気流が形成する気圧の谷が東進していました。

f:id:ohigehige:20220322204955p:plain

 上図は、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして図示した、2022 年3 月 21 日 午前 9 時(左)および午後 9 時(右)の秋田における気温、露点及び風の鉛直分布です。

 航空機が飛行しているのは、主に 300 ~ 200 hPa(約 30,000 ~ 38,000 ft)ですが、この半日の間に、風速は 50 kts 程度増速しました。一方気温は 300 hPa では数℃上昇、200 hPa では 5、6 ℃下降しています。つまり、航空機の水平飛行に使う高度帯では、相対的に下層がより暖かく、上層がより冷たくなり、不安定さが増したと言えます(気圧の谷なので、当然と言えば当然ですが…)。圏界面に関して言えば、午前 9 時には 373 および 165 hPa に形成されていた圏界面が、午後 9 時には 185 hPa が第一圏界面となりました。31,000 ft に中心軸を持つジェット気流に関連する圏界面が、ジェット気流の東進と共に消えたと思われます。

 航空機の巡航する高度帯では、、大気はより不安定となり、風速は増大し(水平方向に渦が出来やすくなり)、鉛直方向にも風速差が大きくなった(鉛直方向にも渦が出来やすくなる)となれば、揺れる要素満載です。タイミングによっては、北海道に向かう路線は、それなりの揺れに遭遇したことと思います。

 案外安定していたのは、朝晩曇りで 5 ℃程度だった、地上付近なのかもしれません。

 

 現在午後 9 時を過ぎました。どうやら停電は免れているようですね。それとも安心するにはまだ早いのでしょうか。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

備え共生するのはウイルスとだけではない

すごい地震でしたね 

 先週 11 日に東日本大震災から 11 年が過ぎたことを思い起こしたばかりだというのに、それから一週間も経たないうちに、福島県沖を震源とする最大震度 6 強の地震が起こるとは、備え共生してゆくのは、ウイルスとだけではないことを改めて思い知らされました。

 地震の震度も 4 以上になると、「今回の地震はなかなか大きい」と感じるようになる気がしますが、昨日の福島県地震の最大震度は 6 強とのこと。東日本大震災の時に私が体験した震度が 5 強であったことを考えれば、昨日の地震も、すでに私の経験を超えた想像の域にしかありません。地震による被害や影響が極力大きくならないことをお祈りするばかりです。

 今後に備える意味で、分かっていそうで未体験域の残る震度にについて調べてみました。

www.jma.go.jp

 紹介されているリーフレットには、震度が身の回りの被害状況に関連付けられ紹介されていますが、状況から判断するのではなく、計量的に算出されていたのですね。初めて知りました。

 いずれにせよ、震度 5 弱ないし 5 強位になると、家の内外のものが倒れる可能性が出てきて、被害が一気に増えてきそうです。ついこの前は雪のため、北海道の交通が大きな影響を受けていたところですが、今回は東北新幹線が脱線したそうです。耳を疑うばかりです。

 

緊急地震速報

 私が住んでいる場所は震度 4 でしたが、緊急地震速報を受け、家中のスマホが鳴り響きました。実に久しぶりのことです。

 緊急地震速報自体は 2007 年から発表され始めましたが、2011 年の東日本大震災を受け、新しい予測手法(PLUM 法)を併用して発表されています。気象庁の HP では速報に関して様々な解説がされています。その量の多さこそ、実際の場面で有意な結果を出すべく色々な努力が重ねられていることを如実に物語っているようです。まだ読んでいる最中ですが(汗)、ブラックボックスとなりがちな知見や技術を理解しつつ、その性能を最大限に活用できればと改めて思った次第です。

www.data.jma.go.jp

 

秋は短く、春も短い?

 三寒四温どころか、東京ではこの 1 週間近く、春を通り越して季節が進んでしまうのではないかと思うような暖かい日が続いていましたが、どうやら明日は寒の戻りのようです。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

春霞 - 2022.03.08 ~ 09 -

すっかり春らしくなりましたね

 3 月になってすでに 10 日、東京でも春一番がすでに吹き、春めいてきたというよりも冬はもう遠のいた、そう感じるのは私だけでしょうか。

 みなさんは、どんなものに春を感じるのでしょうか。学校行事、年度末の仕事、街の神社やお寺の片隅に咲く梅の花等、その兆候は色々ありますが、空の上の兆しとしては、ジェット気流が弱まることが挙げられます。そして、日に日に強くなる陽射しのおかげで、空が明るさを増すようになります。

 

春霞

 確かに空の明るさは増すのですが、一方で春の青空は、冬の抜けるような青空とはちょっと異なります。景色や空の見通し距離がやや落ちる現象は、一般的には春霞と呼びます。大気中の水蒸気量が増えるため、背景がかすんで見えることを表す言葉です。それは例えば、植物から蒸散する水蒸気量が多くなったり、あるいは南からの湿った空気が流れ込みやすくなるためであったりします。

 雨上がりのこの時期、四国山地中国山地の山端では、まさに春霞と形容するにふさわしい霞がたなびくのをよく目にしますが、見通しが落ちる原因は、もしかしたら大気中の水蒸気量の増加だけではないのかもしれません。時に、黄砂や花粉も飛来します。また成田では有名ですが、春一番のような強風が吹く時には、冬の間に乾いた畑の表土が巻き上げられ、BLDU(Blowing Dust:高い風じん)と呼ばれる視程障害現象が発生します。こうしたものも確かに季節の風物ではありますが、埃っぽさと春霞には、風情という観点から、やはりちょっと線を引きたいものだと個人的には感じます。

 そして、霞むのは地表付近だけではありません。上空でも、大気の性質による不連続面が出来るのでしょうか、薄い層のようなものをしばしば、時に数層目にするようになります。もっとも、いずれもそれほど厚くなく、長い時間持続しているわけでもないのですが、そうした層の付近の高度では、渦とまでは言わないまでも不連続層が出来ているようで、冬場のジェット気流の前線帯のような大きな揺れに遭遇するわけではありませんが、軽い揺れを経験することがしばしばあります。

 冬の間の乾いた大気に日に日に加わる潤い、それが霞という形で目にするのだとすれば、季節はやはりもう春なのでしょうね。

 

3/8、9 の大気の鉛直分布

 おととい 3/8 は最高気温が 10 ℃に届かない、雨のぱらつく寒い一日でしたが、昨日 3/9 を含め、2 月末位からは、日中は寒さを感じないことが増えました。

 館野を例にとり、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして、観測値を確認してみました。

f:id:ohigehige:20220310211005p:plain

 上左図は 3/8、上右図は 3/9 の館野における気温と露点、および風の鉛直分布です。

 日中の気温が上がる前の気温は 5、6 ℃で同じですが、曇っていれば気温は上がらず、晴れていれば、気温は 10 数℃まで上がります。日射が強くなってきたことが窺えます。

 上空の気温分布に有意な違いがあるわけではありませんが、薄い層のように見えた高度帯は、450~480 hPa 周辺、20,000 ~ 24,000 ft 付近でした。少し逆転層のようになっている高度帯ですね。

 右 9 日上空の風速は50 ~ 70 ktsと、この冬ジェット気流の風速が大きい時には 200 kts を超えていたことがしばしばあったことを思うと、実に mild になったものです。

 

霞、それとも単に曇り?

 春は晴れても霞んでいる、と暖かくなってきたことを喜んでいますが、実は曇っているだけなのかもしれないと感じさせる言葉もあります。そうです、桜の時期に使う「花曇り」です。東京では週末、20 ℃ を超える予報が出ています。寒暖の差が顕著になれば、春分を迎える前に桜の開花を耳にするのかもしれませんね。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。