海を北に眺める街で ~ 福岡市 ~

気温は寒いのに、夕立のような激しさの雨

 断続的に激しい雨が降っては束の間の青空を覗かせる。そう、感じとしては夏の夕立と同じ降り方だ…。

 

 昨日もそうでしたが、福岡市では今日も朝から、そんな空模様が何度となく繰り返されています。

 「夏には南からの湿った空気が流れ込み、収束することで対流雲が形成され、場合によっては一時的に激しい雨を降らせる。冬には、大陸からの寒気が日本海で気団変異することで、日本海側に雪を降らせる。」そういった教科書的理解からすると、今日の雨の降り方はなかなか激し過ぎる、そう感じていました。 

 地上天気図には昨日から、北海道、朝鮮半島北部、中国北東部にいくつもの低気圧が描かれ、西日本でとりわけ顕著ですが、日本全体が大きなトラフ下にあり、上空に寒気が停滞している状況が窺えます。気圧傾度は比較的大きめですが、それにしても 10 数℃という低めの気温で、どうして活発な対流雲からの雨が断続的に繰り返されるのか、しっくり来ませんでした。しかし…、これは実のところ至極当然で、自分の先入観に単に邪魔されていただけだ、と思い当たりました。

 

どこに海と山があるのか、それが問題だ

 福岡市で西~北西の風が吹くということは、海からの湿った大気が吹き込みます。その状況では、市の南に位置する背振山地や東の山地の影響により、大気は強制上昇させられたり、収束します。言い換えれば、対流雲が発達しやすい状況にあります。前線が天気図にはないにもかかわらず繰り返す一時的な激しい雨は、前線の活動によるものではなく、地形による収束を受けた対流雲による降水ということです。その降水現象は、気温が 0 ℃近くになれば雪となり、今回は 10 ℃以上あったため雨だった、と考えるのが妥当そうです。

 土砂降りになるのは、それが前線性であっても台風によるものでも、暖かく湿った大気が収束し対流雲となったからである、というのは確かに事実です。しかし、どちらかと言えば太平洋側に関する降水原因の記述と言えます。今回、前線が見られない状況下で西~北西の風で活発な雨が降る、という事実にピンとこなかったのは、自分自身が関東で長く生活していて、そういう状況を肌感覚として持っていなかったからだ、ということを思い知らされた一時でした。

 

福岡の大気の鉛直方向の状況

 最後に、今日ほど土砂降りはなかったのですが、気圧配置がほぼ同じの 2021 年 11 月 9 日午前 9 時点の福岡における気温と風の鉛直分布を確認してみることとしました。もちろん、気象庁の高層気象のデータをお借りしております。

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 まず気温ですが、ある高度までは高度と共に大きな減率で低下していますが、地上 2000 m 位(800 hPa 辺り)で大きく上昇に転じています。これが何によるものなのかは分かりませんが、周辺の山地の高度 +α 程度の高さで、気温が 10 度近くも上昇しているのは興味深い観測結果です。その高さ付近では気温と露点が一致しており、雲が出来ていたことが推察されます。

 地上 5500 m 周辺(450 -500 hPa)で再び気温と露点が接近しており、またその高度を超えた高さから風速が急増していることから、上空の強風帯に伴う前線帯が形成されていた可能性が高そうです。FBJP 悪天予想図では、鹿児島県上空高度 38,000 ft(11,500 m)に  140 kts の強風帯が予想されていましたが、福岡上空でも、その強風帯の影響が見て取れる状況だったようです。

 

 低く厚い積雲、玄海灘からの冷たい海風は、暦以上に冬を感じさせる気がします。でもこれが、豊かな食や生活の源泉となっているのでしょう。いいですねー、大好きです、福岡…。

 本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。