圏界面付近の揺れ - 2021.11.24 -

今年もそろそろ残りひと月ですね

 月末に次の 1 か月の仕事の予定が出る生活を続けて 20 年余り、ついに今年も年末までの勤務予定が決まりました。無事に過ごすことを第一に日々を過ごそうと心掛けているわけでは全くありませんし、気分のささくれ立つこともままあるにせよ、総じて大過無く過ごせてきたことはやはりありがたいことだと、年の最後のスケジュールが出るこの時期にはいつも、素直に感じます。

 

冬の始まりを感じるのはいつですか

 今月 7 日には立冬、22 日には小雪となり、季節は着実に進んでいます。一方で、意識していたとしても、日々の変化にはなかなか気がつかないことも事実です。東京では朝晩は確かに寒くなりましたが、日中は 17、8 ℃ほどになるので、実感として冬を感じるようになった、というよりは、季節感を意識して持とうとしている、と言えなくもない部分もある気がします。もっともこれは、東京ではというよりは、街中ではという方が正しいかもしれません。

 冬の始まりを確実に感じるのは一体どんな時でしょう。個人的には、そのシーズンに初めて舞う雪を目にした時かもしれません。

 高い山では早ければ、9 月末や 10 月初旬に初冠雪となります。もっとも、その時期にはまだ半袖で過ごしていることも多く、季節の移ろいどころか、いつまで夏が続くのか、涼しくなる日を心待ちにしている時期でもあります。

 紅葉が徐々に落ち葉へと変わり、降る雨が次第にその冷たさを増しても、東京では雪が降ることは稀です。そんなわけで、雲の間から日が差すことがあるにもかかわらず、流れ込む雪雲から雪が舞う景色は、私にとって、冬を感じさせてくれるこれ以上ない景色です。

 今年は 11/24 に千歳で舞う雪を目にしました。

 

圏界面付近が揺れた日

 先日『立冬雑感』で、冬に「成層圏下層を飛ぶ場合には全くと言っていいほど揺れない快適な飛行となる場合が多い」、と書いたばかりですが、昨日 11/24 は、その数少ない揺れる日だったようです。

 26,000 ft に強風軸を持つと予想された、佐渡島から仙台付近へと吹きぬける寒帯ジェット付近では、37,000 ft の高さでも、いかにも圏界面近辺の揺れ、という感じの状況が 10 分ほど続きました。ラジオゾンデによる観測では、必ずしもその地点の状況が観測されるわけではないのですが、やはり観測値を見てみたいと思い、館野と秋田の高層観測値を見てみました。

f:id:ohigehige:20211125234245p:plain

 上図は、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして図示した、2021 年 11 月 24 日午前 9 時における館野(左)と秋田(右)の大気鉛直方向の気温および露点、そして風の分布です。

 館野では、310 hPa( 約 8660m)で第一圏界面となっており、その少し上の高度では、温度が一定どころか顕著に上昇しています(秋田の方は圏界面上で、概ね一定です)。揺れていたのは、この温度が上昇している高度付近( 290 hPa 周辺)だったようです。

 ジェット気流の軸付近や県界面直下には、ケルビン ヘルムホルツ波(K-H 波)と呼ばれる、鉛直方向に風のシアーや密度差を理由として波が形成される場合あり、これが揺れの原因となることが知られています。K-H 波は、トランスバースラインと呼ばれる雲として目に見える時もありますが、この時には、雲はなく、ジェット軸付近とも言えない気がしました。ただ、圏界面直上で、気圧が下がり温度が上がると、密度差は普通以上に大きくなりそうなので、そうしたことも一因にあるのかな、とちょっと感じた次第です。

 それにしても、館野と秋田の下層の気温と露点を見ると、太平洋側と日本海側の冬の天気の特徴が一目瞭然ですね。秋田では、700 hPa(3,000 m 位)まで気温と露点がほぼ同じで、雪雲が出来ていたことが窺えます。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。