梅雨本番 - 2022.06.15 - モンスーンの東端

全域が梅雨となりました

 今日 6/15、東北地方が梅雨入りし、北海道を除き、ついに日本全域が梅雨となりましたね。

www.data.jma.go.jp

 今日の東京に関して言えば、梅雨前線に伴う雨、あるいは、前線上を移動する低気圧に伴う雨というよりは、北海道、東北地方沖(岩手県東、北緯 39 度、東経 151 度辺り)に中心を持つ高気圧から吹き込む、冷たく湿った海風による弱い霧雨が何となく降ったり止んだりを繰り返す一日でした。事実、梅雨前線もだいぶ南に位置し、関東地方は停滞前線の寒気側に位置しています。

 

北東の海風が吹く時(も?)、成田は靄に見舞われる

 北海道、東北地方沖の高気圧は、寒流である親潮上空を吹き抜けるため、冷たい北東の海風を本州東岸域に運んできます。この北東風は、「やませ」と呼ばれ、これが続くと、農作物の生育に悪影響を及ぼすこともよく知られるところです。

 関東地方も例外ではなく、梅雨前線の北側に位置するこの時期、この弱い北東風に見舞われることが少なくありません。湿った海風であるため、風速は弱いながらも、低く薄い層の雲が垂れこめます。

 今日 6/15 午後 0 時頃、成田は一時的な靄に見舞われ、特別観測が通報されていました。

- 午後 0 時から 0 時 30 分までの成田 (RJAA) 空港のMETAR -

150330Z 11008KT 3000 R16R/1300VP2000D R16L/P2000N -RA BR FEW003 BKN010 BKN015 18/18 Q1013 TEMPO FEW005 BKN008=


SPECI 150321Z 11006KT 040V150 4500 R16R/P2000N R16L/P2000N -RA BR FEW006 BKN010 BKN014 18/17 Q1013 RMK 1ST006 6ST010 7SC014 A2994=


150300Z 08007KT 050V110 8000 -RA FEW006 BKN009 BKN014 19/17 Q1013 NOSIG=

 鹿島灘からの弱い風、雲底 1,000 ~ 1,500 ft(300 ~ 450 m)の低い雲が一面に広がる小雨の中、一時的に靄が出て見通しが悪くなったようです。成田は朝靄も有名ですが、湿度が高く、風速が小さければ、時間は問わないかもしれませんね…。

 

低層雲の上に目を向けると

 低層雲の上、地表の摩擦の影響が概ねなくなる地上 1,500m(5,000 ft)の風の場に目を向けてみると、成田の地表では東寄りの風が卓越していましたが、東海~関東地方では、高気圧の西側を回って、南寄りの風が吹き込んでいる様子が見て取れます。

 地上天気図上の梅雨前線と高気圧の境界域は、風の不連続域となっていることも窺えます。

 上図は『毎時大気解析』と呼ばれる、風向の解析図で、名前の通り、一時間ごとに気象庁から発表されます。気象現象の寿命はその現象の大きさに比例するので、一時間ごとに得られる風向場の情報は、雨雲レーダーと並んで、低中層の対流域の把握に大助かりだったりします。

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 梅雨のこの時期、低く垂れこめた雲のすぐ上では、地表付近とは大きく違った様相が広がっています。

 

モンスーン - 地球規模の海陸風 -

 梅雨前線は、太平洋高気圧とユーラシア大陸からの高気圧の境界に形成させる前線ですが、より広範囲に目を向ければ、アフリカ東岸からインド洋、東アジアに至る、10,000 km に及ぶ季節風の変化の一環です。

 この季節風はモンスーンと呼ばれ、夏季は陸地がより温まることにより、 南よりの湿った海風が卓越するモンスーンの時期であり、冬季は寒冷な大陸から相対的に温かな海に向かって北寄りの陸風が卓越する時期と言えます。日本は、このアジアモンスーンの東端に位置すると言え、太平洋高気圧の周りを回る南寄りの風と、シベリア高気圧からの北寄りの風が変化する時期に境界に形成されるのが、梅雨前線であり、秋雨前線と言えます。

 雨期の大量の降水と湿度の高い高温により、東南アジアは、稲作に適した肥沃な大地と気候となっています。もっとも、日本では今夏、暑さによる電力逼迫が折に触れて予想されており、インドやパキスタンでは先日、すでに 50 ℃を超える気温が観測されています。

 北東の海風が吹くこの時期、爽やかな五月晴れと比べ、梅雨寒と称されることもありますが、エアコン要らずで静かに過ごせる毎日は、あるいは恵みの一時期なのかもしれません。

 

ひと月余りぶりに…

 前回記事を書いてからひと月半ほどになります。季節も止まることなく進みますが、世の中の情勢の変化も、その行方も程度も、理解することも見通すこともままならないと感じる毎日です。コロナ禍からウクライナ侵攻、そして、それを発端とした、エネルギー、食糧、経済問題など、価値観や世の中の構造自体の変化を感じるこの頃です。

 より良い着地点に向かうことを願うばかりです。

 

本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。