局地的豪雨と大気の安定度 - 2022.08.03 ~ 06 -

 日中は変わらず暑い日が続きますが、夕方になると、僅かにしのぎやすくなってきた、と感じるのは気のせいでしょうか…。やっぱり気のせいでしょうね、間違いなく(笑)。けれど、日の入りは、間違いなく早くなっています。お盆を前にした今、夏の日々を満喫したいものです。

 

今日は夏の日差しが戻ってきましたが…

 昨日、そして今日 8/8 は、本州を太平洋高気圧が覆う、いかにも夏の気圧配置でしたが、先日 8 月 3日から 6 日は、各地で雷雲が発生していました。本州東部には停滞前線が形成され、本州から九州中北部は高気圧の進行方向後面の周辺に位置していたことにより、大域的には、対流活動が起きやすい状況下にあったと言えます。

 交通が麻痺してしまうほどの積乱雲が発生したことは、やはり地形による大気の強制上昇など、局地的な要因が大きく関わっていそうです。実際、この期間、琵琶湖の南域、京都府北部から鳥取県全域、広島県香川県東部等には、それはそれは雄大な積乱雲が、連日のように形成されていました。

 積乱雲の生滅は、せいぜい数時間程度の現象であったようですが、逆に言えば、比較的短期間に元気に発達し、貯えた水分を存分に放出し、消滅していたと言えます。暖かい海から供給された水分が地上の降水へと変化する。恵みと災害は、その程度こそが重要な問題であることを改めて感じさせられます。

 

ショワルター安定指数

 交通が麻痺してしまうほどの積乱雲が発達した時、大気はどの程度不安定だったのでしょうか。積乱雲が発達して降水が始まろうとしている時期と、降水が小康状態となり、雲が消散へと向かう時期では安定度には、おそらく違いがありそうですが、8/3 から 6 日はどのような状況だったのか、実際の高層気象データを用いて、ショワルター安定指数を求めてみました。

www.data.jma.go.jp

 ここで、ショワルター安定指数(Showalter Stability Index)とは、大気の安定度を評価するための指数で、ざっくり言うと、850 hPa(地上約 1,500 m)の大気を 500 hPa(地上約 5,500 m)に強制上昇させた時の気温 Tρ が、実際の 500 hPa の大気の気温 T(500) と比べ、高いか低いかによって、大気の安定度を指数化したものです。つまり、

 SSI = T(500) - Tρ

として求めます。これが負の場合、つまり、強制上昇した大気が周囲より暖かい場合、更に上昇が可能であるため、大気は不安定である、と解釈できます。

 

8/3 から 6 日午前 9 時における、串本、輪島、松江のショワルター安定指数

 ショワルター安定指数を求める際には、その定義通り、エマグラムを使ったり、あるいは、例えば python のライブラリ MetPy を使ったりなど色々ありますが、今回は計算用サイトを見つけたので、それを使ってみました。

keisan.casio.jp

生活や実務に役立つサイト、という名前がついていますが、SSI はそんなにポピュラーなんでしょうか…。

  8月3日 8月4日 8月5日 8月6日
串本 4.46 -2.26 -0.16 -1.2
輪島 -1.16 -2.73 1.19 0.95
松江 0.73 -0.07 0.52 -1.63

 上の表は、8/3 ~ 8/6 における串本、輪島、松江について、気象庁の高層気象データからショワルター安定指数を求めて、一覧にしたものです。

 ニュースで報じられる程だった地点と、高層気象データの観測地点は当然ながら一致しないので、比較的近い場所を選んでみたのですが、串本と輪島については、(何となく)雷雨の気配を感じますね。

 気温が上がる午後には、指数がもう少し小さくなって(つまり、850 hPa の大気がより暖かくなって、500 hPa の大気との温度差が大きくなって)、激しい雷雨の可能性大だったのかもしれません。一方、連日鳥取県が積乱雲の下だったので、松江のデータを見てみたのですが、指数を見る限り、松江は不安定だった、と積極的に断定することは難しいように思います。

 

 明日からしばらくは、太平洋高気圧が本州全域を覆い、猛暑日が続く予報となっています。停滞前線による激しい雨は、津軽海峡周辺へとその舞台を移すようですね。いよいよお盆を迎えます。猛暑を癒す、恵みの雨となって欲しいものです。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。