局地的豪雨と大気の安定度 - 2022.08.03 ~ 06 -

 日中は変わらず暑い日が続きますが、夕方になると、僅かにしのぎやすくなってきた、と感じるのは気のせいでしょうか…。やっぱり気のせいでしょうね、間違いなく(笑)。けれど、日の入りは、間違いなく早くなっています。お盆を前にした今、夏の日々を満喫したいものです。

 

今日は夏の日差しが戻ってきましたが…

 昨日、そして今日 8/8 は、本州を太平洋高気圧が覆う、いかにも夏の気圧配置でしたが、先日 8 月 3日から 6 日は、各地で雷雲が発生していました。本州東部には停滞前線が形成され、本州から九州中北部は高気圧の進行方向後面の周辺に位置していたことにより、大域的には、対流活動が起きやすい状況下にあったと言えます。

 交通が麻痺してしまうほどの積乱雲が発生したことは、やはり地形による大気の強制上昇など、局地的な要因が大きく関わっていそうです。実際、この期間、琵琶湖の南域、京都府北部から鳥取県全域、広島県香川県東部等には、それはそれは雄大な積乱雲が、連日のように形成されていました。

 積乱雲の生滅は、せいぜい数時間程度の現象であったようですが、逆に言えば、比較的短期間に元気に発達し、貯えた水分を存分に放出し、消滅していたと言えます。暖かい海から供給された水分が地上の降水へと変化する。恵みと災害は、その程度こそが重要な問題であることを改めて感じさせられます。

 

ショワルター安定指数

 交通が麻痺してしまうほどの積乱雲が発達した時、大気はどの程度不安定だったのでしょうか。積乱雲が発達して降水が始まろうとしている時期と、降水が小康状態となり、雲が消散へと向かう時期では安定度には、おそらく違いがありそうですが、8/3 から 6 日はどのような状況だったのか、実際の高層気象データを用いて、ショワルター安定指数を求めてみました。

www.data.jma.go.jp

 ここで、ショワルター安定指数(Showalter Stability Index)とは、大気の安定度を評価するための指数で、ざっくり言うと、850 hPa(地上約 1,500 m)の大気を 500 hPa(地上約 5,500 m)に強制上昇させた時の気温 Tρ が、実際の 500 hPa の大気の気温 T(500) と比べ、高いか低いかによって、大気の安定度を指数化したものです。つまり、

 SSI = T(500) - Tρ

として求めます。これが負の場合、つまり、強制上昇した大気が周囲より暖かい場合、更に上昇が可能であるため、大気は不安定である、と解釈できます。

 

8/3 から 6 日午前 9 時における、串本、輪島、松江のショワルター安定指数

 ショワルター安定指数を求める際には、その定義通り、エマグラムを使ったり、あるいは、例えば python のライブラリ MetPy を使ったりなど色々ありますが、今回は計算用サイトを見つけたので、それを使ってみました。

keisan.casio.jp

生活や実務に役立つサイト、という名前がついていますが、SSI はそんなにポピュラーなんでしょうか…。

  8月3日 8月4日 8月5日 8月6日
串本 4.46 -2.26 -0.16 -1.2
輪島 -1.16 -2.73 1.19 0.95
松江 0.73 -0.07 0.52 -1.63

 上の表は、8/3 ~ 8/6 における串本、輪島、松江について、気象庁の高層気象データからショワルター安定指数を求めて、一覧にしたものです。

 ニュースで報じられる程だった地点と、高層気象データの観測地点は当然ながら一致しないので、比較的近い場所を選んでみたのですが、串本と輪島については、(何となく)雷雨の気配を感じますね。

 気温が上がる午後には、指数がもう少し小さくなって(つまり、850 hPa の大気がより暖かくなって、500 hPa の大気との温度差が大きくなって)、激しい雷雨の可能性大だったのかもしれません。一方、連日鳥取県が積乱雲の下だったので、松江のデータを見てみたのですが、指数を見る限り、松江は不安定だった、と積極的に断定することは難しいように思います。

 

 明日からしばらくは、太平洋高気圧が本州全域を覆い、猛暑日が続く予報となっています。停滞前線による激しい雨は、津軽海峡周辺へとその舞台を移すようですね。いよいよお盆を迎えます。猛暑を癒す、恵みの雨となって欲しいものです。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

2 つの高気圧下の夏の日 - 2022.08.02 -

暑くても体を動かすのはやっぱり気持ちが良いですよね

 暑い、と言うより暑過ぎる日が続きますね。30 数 ℃ の気温であれば、暑い夏、と言うだけなのかもしれませんが、気温が 35 ℃を超えてくると、特にアスファルトの上では、暑さと同時に陽射しの痛さが加わってくるように思えます。日傘が売れる訳ですね。

 とはいえ、今年は 1 週間以上続く猛暑日を 6 月下旬に練習(?)したせいか、暑いのは紛れもない事実にもかかわらず、どこか身体が慣れているようにも感じます。もちろん、過信は厳禁ですが…。

 さすがに午後 2 時前後の炎天下に激しく体を動かすのは避けようと思いますが、午前中早目の時間帯や夕方、ジョギングの代わりにポールウォーキングで体を動かすと、心も頭の中も空になり、夏の素晴らしい一時を満喫しているのかも、とちょっと嬉しくなります。あるいは、これは熱中症の一歩手前で、本当は気をつけないといけない状況になっているのかもしれませんね(汗)。

 

上空のチベット高気圧はどうだったのでしょう

 日本で猛暑時には、地表から対流圏中層を覆う太平洋高気圧と同時に、対流圏上層ではチベット高気圧が優勢となることが多いと先日書きましたが(『暑さの鍵、亜熱帯高気圧』)、今日のような猛暑日はどうだったのでしょう。

AUPA20 200hPa アジア太平洋高層解析図 2022.08.02 09L

 上図は、200hPa(上空 12,300 m、41,000 ft 近傍)の風向場の解析図です。青森県上空まですっぽりチベット高気圧に覆われているのが見て取れます。

 

太平洋高気圧の上限

 暑い日の原因、それは、当然ながら大気の流れです。地上天気図で見る太平洋高気圧の周囲をまわるように、南から湿った大気が流れ込み、そして、それに地形によるフェーン現象が加わり、結果この何日間かのような猛暑となります。

 しかし、上の高層解析図からも明らかなように、チベット高気圧圏内では東~北東風が卓越します。では、太平洋高気圧とチベット高気圧の境界はどの辺りの高度となるのでしょう。日常生活にはほぼ無関係なものの、航空機が飛行する場合には、やや軽い揺れとなることも少なくないため、ちょっと関心があったりします。

 今日地上天気図では、九州西~朝鮮半島付近に太平洋高気圧の等圧線が描かれていたので、その等圧線に注目し、上空の風向が変化する高度帯を、毎時大気解析で見てみました。

31,000 ft(地上約 9,400 m)の風向場(2022.08.02 09L 毎時大気解析 気象庁HP より)

27,000 ft(地上約 8,200 m)の風向場(同日同時刻)

 下図 FL270 では、太平洋高気圧の周囲をまわる南寄りの風となっていますが、上図 FL310 では、チベット高気圧の風向となっているようです。ということで、今日 8/2 午前 9 時時点では、太平洋高気圧の上限は、30,000 ft 弱程度と推定されます。確かに、太平洋高気圧の上限を風向変化で予想するとすれば、20,000 ft 代後半のことが多いかな、という肌感覚とだいたい一致します。

 

 暑い日は当分続きそうですが、二十四節気では、来週には立秋となります。色々なことがありますが、今年の夏は今年のものでしかないのは、紛れもない事実です。暑さも一つの恵み、存分に味わいながら日々過ごしたいものです。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

何となく気圧の谷 - 2022.07.22 -

学校も夏休みに入りましたね

 6月下旬に続いた猛暑日が強烈だったこともあり、7月に入ってからは、何となくはっきりしない空模様や梅雨の戻りを感じさせる日々が続いた印象があります。もっとも、この数日は、関西地方から愛知県では夏らしい空が広がっています。夏休みが始まる頃には夏らしくなり、結果としては、天気も落ち着くべき所に落ち着いた、と言えるのでしょうか。

 ただ、地上天気図的には、太平洋高気圧にどっぷり覆われているわけでなさそうです。

 

日本上空は何となく気圧の谷

 7月初旬を除き、日本周辺では、地上天気図上に低気圧や停滞前線が目立つ日が続いていますが、対流圏上層に目を向けると、ジェット気流の蛇行する気圧の谷となっていることが多い印象です。

 夏場に悪天予想図(FBJP)等にジェット気流が予想されることはそう多くはないのですが、今月は、朝鮮半島上空を北西から南東方向にジェット気流が流れ、また本州上空を南西から北東方向にジェット気流が走る悪天予想図(FBJP)をよく目にします。昨日 7/22 もそんな一日でした。午後 6 時における高度 35,000 ft の風向場の解析は以下のようでした。

35,000 ft(地上約 10,800 m)の風向場 (2022.07.22 18L 毎時大気解析 気象庁HP より)

 冬場に比べ、夏場は対流圏の対流活動は大きいのでしょう。同じ気圧の谷が予想されていても、こういった状況下では揺れる場所や高度帯が格段に広くなることも多く、その結果、静かで揺れない飛行をお届けすることが、なかなか難しくなることがあるのも否定できません。事実、昨日も西日本では、高度 26,000 ft を超えると、どの高度もパッとしない、むしろ結構揺れる状況となっていた場合が多かったようです。

 こういう時には、エアコンの効いた機内で揺られながら、暑さで浅くなりがちな眠りの不足を補い、目的地で万全に過ごすための英気を養う機会として頂くのが良いかもしれませんね(笑)。

 

太平洋高気圧の今後は?

 朝鮮半島上空を走るジェット気流は、チベット高気圧の東端と見なせるのかもしれませんが、ジェット気流の蛇行が予想されるほど、気圧傾度、あるいは温度勾配が形成されているのは、やはり不思議な気がします。

 ヨーロッパでは観測記録を塗り替える暑さが連日どこかで起きているようですが、太平洋高気圧の張り出しがまた戻って来ると、チベット高気圧と相まって、日本では猛暑日、熱帯夜の日々になるのでしょうか。暑い夏は楽しみですが、暑過ぎる夏は、やはり今後が心配になります。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

 

暑さの鍵、亜熱帯高気圧

七夕の青空

 東京では午後からは 7/2 以来の青空となりましたね。

 今日は 24 節気の小暑、本来なら梅雨明けが近づき、暑さが本格的になって来るという節目の時期ですが、今年は既に梅雨は明け、9 日続いた猛暑日に一息ついていた年となっています。台風 4 号だった温帯低気圧が東進し、海からの北東の風が卓越する一日だったこともあり、日中も暑すぎず、夜(23:30 現在)もエアコン要らずで快適です。

 私が住む場所では、空を見上げても天の川を見ることはほぼ叶いませんが、それでも晴れた七夕の夜を迎えるのは久しぶりの気がします。静かな夏の一夜です。

 

今日もどこかで、干ばつと洪水なのでしょうか…

 もっとも、北イタリアでは干ばつ、オーストラリアのシドニー郊外では洪水と、異常と言えるような激しい気象現象は、確かに至る所で見受けられます。あるいは、先日の台風 4 号の時の降水も、九州南部や四国の太平洋側では激しいものでした。

 ただ、私がたまたまそういう media を見ているだけかもしれませんが、文字通り欧米の media は、一つの激しい気象現象を、気候変動(Climate Change)や温暖化(Global Warming)という言葉を使って報じる傾向があるように感じますが、日本では、たとえ線状降水帯が発生して警戒級の大雨だったとしても、それが温暖化によるものだと報じられたことは、ほとんど聞いたことがありません。気候に対する受け止め方の違い、あるいは、実際に気象現象の程度や頻度の違いなのでしょうか。

 

アゾレス高気圧(Azores High)

 大西洋の地図に描かれた高気圧を「アゾレス高気圧」と呼んでも、私は正直ピンときませんでした。むしろ、北大西洋高気圧、あるいはバミューダ高気圧と言われる方がよく分かる気がしたのですが、それは、私がアメリカから見た言い方に引きずられているためのようですね…。

 アゾレス高気圧は亜熱帯高気圧の一つで、北大西洋中央のポルトガルアゾレス諸島付近に形成され、ヨーロッパや北アフリカの気候に影響を与えます。このアゾレス高気圧が、20 世紀には過去 1,200 年において、前例がないほど勢力が強くなっていたことが確認されたとの事です。(私は、お金を払っていないので、残念ながら要約しか読めませんが(泣)。)

www.nature.com

 下のニュースでは、ニュースキャスターは、高気圧の勢力拡大が人間の活動によるものなのかどうかを、出演した上の論文の著者に言及して欲しかったみたいですが、少なくとも学術的には、明快に肯定できないようで(まあ…、当然のような気もしますが)、微妙な「間」が個人的には面白かったです。

www.youtube.com

 

チベット高気圧

 夏に目にする日本の地上天気図に現れる高気圧と言えば、日本の南東に位置する太平洋(小笠原?)高気圧があります。太平洋高気圧は対流圏中下層で顕著で、だからこそ、地上天気図に現れているのですが、猛暑になる夏には太平洋高気圧の上部に、蓋をするかのように「チベット高気圧」と呼ばれる高気圧が広がります。

 先月下旬の猛暑日が続いた時以降、西日本から沖縄地方の、航空機の巡行高度帯では、北~北東の風が例年よりも強い印象がありました。今年は梅雨明けも早かったし、チベット高気圧の影響も早く現れているのかもしれないと思い、高層解析を見てみると…、6 月だというのに、チベット高気圧がすでにはっきりと見て取れます。

AUPA20 200hPa アジア太平洋高層解析図 2022.06.28 21L

 先日の記事『短い梅雨の後 - 2022.06.28 -』中の、FL370 の毎時大気解析に現れていた北東風場は、チベット高気圧の東端だったようですね。

 

 今夏はやはり…、暑い夏を覚悟しなければならないようですね。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

暑さの小休止? - 2022.07.02 -

インドより暑い…

 暑い日が続きますね…。

 暑さを表すのには色々な言い方があると思いますが、イメージ、あるいは想像力に直接訴える、これほどキャッチーな表現もなかなかない、と言ったら失礼でしょうか。

news.yahoo.co.jp

 「インドより暑い」ということは、インド出身の職場の同僚も、やはり言っています。

 日本の暑さの特徴は、①暑い以上に湿度が厳しい、そして、②寒暖の変化が強烈であること、だそうです。例えば、梅雨明け発表前は、朝晩は長袖を着ていることも普通であったにもかかわらず、ひとたび暑くなると、身体が全く慣れてないうちから、この 1 週間のような暑さが続き、それに加え湿気が凄い。だからこそ、体に本当に堪えるのだとか。確かに、その通りですね。

 

暑さに小休止?

 その暑さにもようやく小休止の兆しが見えてきたと言ったら、やや早急でしょうか。

 陸上にはほとんど雲はありませんでしたが、台風 4 号の影響でしょうか。今日 7/2、本州南海上上空、高度 30,000 ~ 37,000 ft には、久しぶりにやや厚さのある雲が広がりました。山沿いに形成される積乱雲を除けば、こうした雲に出会うのは、この 1 週間では久しぶりのことです。

ひまわり赤外画像 2022.07.02 正午

 地上天気図によれば、四国南海上は、確かに高気圧の後面で、太平洋高気圧下のような安定的でない、弱い気圧場が形成されているようですが、東海地方南海上上空でも雲が現れ始めているところを見ると、高気圧の勢力範囲がやや狭まる方向にあることが窺えます。

 

インフラとどう付き合うか

 今日は早朝から、au 回線の不調で騒がしい日となりましたね。私の職場でも、au 回線を使っていたものは軒並み不調でしたが、アメダスも影響を受けたそうですね。

www3.nhk.or.jp

 通信インフラは、進歩と更新の著しい分野でしょうし、準備を重ねても一時的に不調が起ることを完全に避けることは難しいだろう、と個人的には思うのですが、それでも、不調時の代替手段がなかなか見つからない、一時的にその場をしのぐ方向性が示しにくいというのは、通信会社だけにとどまらない、ユーザーサイドの使い方も含めた課題であるように感じるのは、私だけではないと思います。

 暑い夏がやって来ることは、気候変動を肯定すれば、当面解消されることはないでしょうし、東京圏をはじめとした都市圏に人口が集中する社会構造も、当面変わることは無さそうです。だとすれば、通信を含めたインフラには、電力供給のひっ迫とある意味同種の、運用上、使用上のテーマが横たわるように思えます。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

短い梅雨の後 -2022.06.28 - 高気圧の只中

終わりを告げた短い梅雨

 関東ではおととい 6/27、短い梅雨が終わりを告げました。もっとも、梅雨明けの数日前から、気温も天気図も、夏只中を思わせる日が続き始めていたので、気持ちの上での違和感はありませんでした。今年は、梅雨入りも梅雨明けも例年と比べて早かったですが、6 月から夏本番の暑さが始まったかと思うと、気候変動の影響もやはりあるのかと、漠然とした懸念がよぎります。

 梅雨明けは太平洋高気圧の勢力が強いということですが、それは、梅雨前線が北に押し上げられるとも言えます。確かに、本日 6/29 午前 9 時の予想地上天気図は以下のようになっており、これまで梅雨とはあまり縁のなかった北海道が、もしかしたら、今後は梅雨の影響を大きく受ける地域となるのかもしれません。

予想地上天気図 2022.06.29 09L(気象庁HP より)


 今年の今後の状況によっては、現時点では東北北部までしかありませんが、気象庁の梅雨入りの梅雨明けのページに、北海道が加わるかもしれませんね。もしや昨日は、梅雨の特徴が大きく塗り替えられた一日だったのでしょうか(大袈裟ですね…)。

www.data.jma.go.jp

 

炎天下こそ読書!

 公式の最高気温 35 ℃ほどですが、車の気温計は 41 ℃を時々表示していました。確かに、迂闊な行動はややもすると身の危険につながる暑さです。けれど私は、こうしたジリジリするような太陽の下で本を読むのが、昔から好きだったりします。強烈な日差しが色々なものから私を解き放ってくれるのでしょうか。普段とは違った時間の流れ、本の世界へののめり込みがある気がするのです。

 もちろん、時々水を飲みますし、エアコンの効いた部屋に涼みに戻ります。けれど、そんなことを何度か繰り返す暑い夏の一時は、至福の時間の一つです。梅雨明けの発表を耳にした日は、「西行」の歌集を読んでいました。文章にすると…、もうすでに、早々に暑さにやられているような感じですね(汗)。

 

太平洋高気圧の勢力範囲

 おととい 6/27 と異なり、昨日 6/28 は山沿いでも積乱雲の発達はあまりなかったようです。それだけ、太平洋高気圧の勢力が強く、大気が安定していたと言えます。事実、対流圏の中間高度近傍まで、地上天気図から予想されるような、高気圧の周辺をまわって南からの暖気が流れ込む様子が見て取れます。

17,000 ft(地上約 5,200 m) の風向場(2022.06.28 19L 毎時大気解析 気象庁HP より)

 地上 30,000 ft(9,100 m)程度までは全くと言えるほど、揺れの無い安定した状況でしたが、37,000 ft(11,300 m)付近になると、やや揺れに見舞われました。本州南岸には太平洋高気圧からの吹き出し、東北南部から北関東では、北からの大気の流入日本海には高気圧性回転が見て取れます。大陸からの高気圧の張り出しの影響でしょうか…。

37,000 ft(地上約 11,300m)の風向場 (2022.06.28 19L 毎時大気解析)

 北海道を除き、しばらくは飛行機での旅は、揺れの無い快適なものとなりそうです。ですが当面の間、熱中症と電力不足には注意の毎日となりそうですね。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

ヨーロッパも暑い - 2022.06.17 -

暑いのは南アジアだけだはない

 先日、インドやパキスタンで 50 ℃を超える気温が観測された、と書いたところですが、今週はスペインや南仏も暑かったようです。夏を前に、早くも最高気温が 40 ℃を超える日が続き、それは、例年の平均最高気温からも 10 ℃ 以上高いとの事です。

www.youtube.com

 ヨーロッパの 6 月と言えば、’June Bride’ という言葉もあるように、爽やかで、屋外で過ごすのがとりわけ心地良い時期の一つ、という印象があります。日本で言えば、北海道の 6 月と同様です。 ただ、ヨーロッパを一括りにするのは、少なくとも気候的には、単に印象による物言いでしかなかったようです。

 

ケッペンの気候区分によると

 月ごとの平均気温と降水量からその地域の気候を区分する、『ケッペンの気候区分』でヨーロッパの気候区分を見てみることとします(そう言えば一応習いましたねー。興味のある方は、例えば Wikipedia へ)。

 ざっくり言えば、ヨーロッパは、乾燥帯、温帯、亜寒帯の 3 つに、もう少し細かく言えば、スペインの半分は乾燥帯のステップ気候 (BSk)、南仏は地中海性気候 (Csa、Csb)、イギリスからドイツ西半分が西岸海洋性気候 (Cfb)、ドイツ東半分以東が亜寒帯湿潤気候 (Dfb) に分類されます。

 今回山火事となったスペイン南部は、乾燥帯のステップ気候、南仏は地中海性気候に属します。蛇足ながら、爽やかな 6 月という印象は、西岸海洋性気候あるいは亜寒帯湿潤気候地域に拠るのかもしれませんね。

 

今週のヨーロッパの地上天気図は

 気象庁の過去の天気図のように、ヨーロッパの地上天気図のアーカイブがあるか探したのですが、数値予報モデル等に基づいて、Computer による結果をその場で表示するサイトが検索上位を占めました。確かに…、ユーザーは自分が見たい部分を見たいように見られれば良いのですが。私は、定時のスナップショットを見ることに慣れを感じるのですが、そういう世代なのかもしれません。

 色々なサイトがありますが、4 日間の基準時を基に、最大 16 日先の予報まで見られるイギリスのサイトがありました。

www.weatheronline.co.uk

 あれこれ時間をいじってみると、今週のヨーロッパは、アイスランド南には低気圧、そしてアフリカ北部から、イギリス南部、ポーランドアドリア海といった東欧を高気圧が覆う週でした。高気圧下では晴天で、日照時間も多かったと思われます。

 顕著な気圧傾度が形成されているわけではありませんが、亜熱帯高気圧帯下に位置するアフリカ北部の砂漠地帯の熱く乾燥した大気の流れ込みもあるのでしょう。スペインは、熱く乾燥した大気の影響下にあり、その大気が地中海上を移動する際にやや冷やされてから影響を受ける地域は、山火事にならない程度の地中海性気候になるようですね。

 

気候区分が変わるかもしれませんね

 気候変動を抑えるべく、平均気温の上昇幅を 2 ℃ にするという目標をよく耳にします。地球全体の平均気温の上昇が、現在まだ想定内だとしても、特定地域の特定の期間に目を向けると、今回のように、平均から軽く 10 ℃ を超える変位は発生しています。つまり、地域ごとに発生する気象現象は、定量的観点からは、より厳しいものとなる、と言えそうです。平均気温からずれる日数が増えると、近い将来、特定の地域では気候区分すら変わってしまうかもしれませんね。

 日本では山火事はあまり耳にしませんが、線状降水帯やゲリラ豪雨は、梅雨の時期にも台風の時期にも話題になります。

 

 すっきりしないけれども 20 ℃ 代の梅雨空、恵みの一時にまた思えてしまいました。紫陽花も綺麗ですしね。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

梅雨本番 - 2022.06.15 - モンスーンの東端

全域が梅雨となりました

 今日 6/15、東北地方が梅雨入りし、北海道を除き、ついに日本全域が梅雨となりましたね。

www.data.jma.go.jp

 今日の東京に関して言えば、梅雨前線に伴う雨、あるいは、前線上を移動する低気圧に伴う雨というよりは、北海道、東北地方沖(岩手県東、北緯 39 度、東経 151 度辺り)に中心を持つ高気圧から吹き込む、冷たく湿った海風による弱い霧雨が何となく降ったり止んだりを繰り返す一日でした。事実、梅雨前線もだいぶ南に位置し、関東地方は停滞前線の寒気側に位置しています。

 

北東の海風が吹く時(も?)、成田は靄に見舞われる

 北海道、東北地方沖の高気圧は、寒流である親潮上空を吹き抜けるため、冷たい北東の海風を本州東岸域に運んできます。この北東風は、「やませ」と呼ばれ、これが続くと、農作物の生育に悪影響を及ぼすこともよく知られるところです。

 関東地方も例外ではなく、梅雨前線の北側に位置するこの時期、この弱い北東風に見舞われることが少なくありません。湿った海風であるため、風速は弱いながらも、低く薄い層の雲が垂れこめます。

 今日 6/15 午後 0 時頃、成田は一時的な靄に見舞われ、特別観測が通報されていました。

- 午後 0 時から 0 時 30 分までの成田 (RJAA) 空港のMETAR -

150330Z 11008KT 3000 R16R/1300VP2000D R16L/P2000N -RA BR FEW003 BKN010 BKN015 18/18 Q1013 TEMPO FEW005 BKN008=


SPECI 150321Z 11006KT 040V150 4500 R16R/P2000N R16L/P2000N -RA BR FEW006 BKN010 BKN014 18/17 Q1013 RMK 1ST006 6ST010 7SC014 A2994=


150300Z 08007KT 050V110 8000 -RA FEW006 BKN009 BKN014 19/17 Q1013 NOSIG=

 鹿島灘からの弱い風、雲底 1,000 ~ 1,500 ft(300 ~ 450 m)の低い雲が一面に広がる小雨の中、一時的に靄が出て見通しが悪くなったようです。成田は朝靄も有名ですが、湿度が高く、風速が小さければ、時間は問わないかもしれませんね…。

 

低層雲の上に目を向けると

 低層雲の上、地表の摩擦の影響が概ねなくなる地上 1,500m(5,000 ft)の風の場に目を向けてみると、成田の地表では東寄りの風が卓越していましたが、東海~関東地方では、高気圧の西側を回って、南寄りの風が吹き込んでいる様子が見て取れます。

 地上天気図上の梅雨前線と高気圧の境界域は、風の不連続域となっていることも窺えます。

 上図は『毎時大気解析』と呼ばれる、風向の解析図で、名前の通り、一時間ごとに気象庁から発表されます。気象現象の寿命はその現象の大きさに比例するので、一時間ごとに得られる風向場の情報は、雨雲レーダーと並んで、低中層の対流域の把握に大助かりだったりします。

www.data.jma.go.jp

 梅雨のこの時期、低く垂れこめた雲のすぐ上では、地表付近とは大きく違った様相が広がっています。

 

モンスーン - 地球規模の海陸風 -

 梅雨前線は、太平洋高気圧とユーラシア大陸からの高気圧の境界に形成させる前線ですが、より広範囲に目を向ければ、アフリカ東岸からインド洋、東アジアに至る、10,000 km に及ぶ季節風の変化の一環です。

 この季節風はモンスーンと呼ばれ、夏季は陸地がより温まることにより、 南よりの湿った海風が卓越するモンスーンの時期であり、冬季は寒冷な大陸から相対的に温かな海に向かって北寄りの陸風が卓越する時期と言えます。日本は、このアジアモンスーンの東端に位置すると言え、太平洋高気圧の周りを回る南寄りの風と、シベリア高気圧からの北寄りの風が変化する時期に境界に形成されるのが、梅雨前線であり、秋雨前線と言えます。

 雨期の大量の降水と湿度の高い高温により、東南アジアは、稲作に適した肥沃な大地と気候となっています。もっとも、日本では今夏、暑さによる電力逼迫が折に触れて予想されており、インドやパキスタンでは先日、すでに 50 ℃を超える気温が観測されています。

 北東の海風が吹くこの時期、爽やかな五月晴れと比べ、梅雨寒と称されることもありますが、エアコン要らずで静かに過ごせる毎日は、あるいは恵みの一時期なのかもしれません。

 

ひと月余りぶりに…

 前回記事を書いてからひと月半ほどになります。季節も止まることなく進みますが、世の中の情勢の変化も、その行方も程度も、理解することも見通すこともままならないと感じる毎日です。コロナ禍からウクライナ侵攻、そして、それを発端とした、エネルギー、食糧、経済問題など、価値観や世の中の構造自体の変化を感じるこの頃です。

 より良い着地点に向かうことを願うばかりです。

 

本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。