旧暦再考 ~ 「中秋」から振り返る
中秋の名月、見えていますか
18日朝に台風 14 号が過ぎ去ってから、今日の昼頃までは、文字通り雲一つない青空の毎日が続き、非の打ちどころのない秋の晴天に恵まれました。中秋の名月にあたる、今日 9/21 夜には、特に関東南部では、雲が少し広がる予報が出ていましたが、今のところ、澄んだ夜空を大きな月が明るく照らしています。
旧暦の呼称や、暦の上での節気を耳にすると、普段見落とし過ごしている季節の移ろいを思い出せるようで、懐かしいような、ほっとするような思いがします。一方で、特に旧暦に関しては、自分の感覚的にはどうもしっくりこない気がします。「中秋の名月」も、秋の満月の代名詞のような印象があるものの、その実、旧暦 8 月 15 日の月を指しているだけに過ぎません。にもかかわらず、話題への上り方はひとかたならないように見えます。おそらく、9月という月は、実際の気温や天候の変化に加え、うだる様に暑いだけだった夏から解放され、私たちのやや麻痺し、疲弊していた感覚が戻って、変化に敏感になれる時期でもあるのかもしれません。
旧暦再考
旧暦と言っても、時代によって時代ごとの暦が実際には使われており、そもそも一意なわけではありません。あくまで現行の太陽暦(グレゴリオ暦)に対置した場合に、それ以前に使っていた暦というだけです。つまり、太陽暦が、地球が太陽の周りをまわる周期を基準とした暦である一方、旧暦である太陰暦は、月の満ち欠けの周期を基準とした暦となっています。
残念ながら、地球が太陽の周りをまわる周期と、月の満ち欠けの周期は、何らかの関係はありそうですが、現実的には対応させようとすれば調整が必要で、実際、普通に生活していては、現在が旧暦の何時にあたるのか分かりません。国立天文台の方々が、膨大な資料を発表して下さっているのは、そういうわけですね。
日本で陰暦という場合、太陰暦を基準にしつつ、太陽の周期に補正するため、閏月を入れた暦です。旧暦の 12/2 を新暦の 1/1 にしたため、ざっくり言えば、新暦は旧暦より 29 日進みました。 旧暦が、新暦のひと月前位の日時にあたるのは、こういう理由です。
月の満ち欠けの周期が、29 日から 30 日のため、陰暦の一年は 354 日となります。そのため、365 日が一年である太陽暦に合わせようとすると、3 年に一度、閏月を入れる必要があります。
太陽暦に関しても、4年に一度、閏年を入れたりすることを考えると、精度が上がれば上がるほど、各種微調整が必要となりそうですね。
私たちは、月の申し子なのか、太陽の申し子なのか
太陰暦から太陽暦を使うようになったことを見ても、歴史的に古いのは、どうやら太陰暦のようです。また、イスラム教の世界では、現在でも太陽の動きの補正を加えずに太陰暦を使っているそうです。
「人間は、日の出ている間活動し、日が落ちたら寝る、という生活を長い間してきた」、というような印象とは裏腹に、実は生活や一年を判断する基準は、夜頭上を巡る月の満ち欠けや、星の動きに基づいていたのでしょうか。それとも、月の観測の方が、太陽の観測よりもやりやすかったという、実際的理由のためでしょうか。
人々の価値観の中で、月に見出していた何らかの価値が、太陽に見出す価値に取って代わられた。その価値観の変化が、太陰暦から太陽太陰暦、そして太陽暦への変遷の一因、原動力になったのではないか、と思うのは、実に勝手な推測ですね(笑)。
昼も夜も爽やかで澄んだ空を眺めていると、本当に幸せな気持ちになります。どうやら明日は晴れの中休みとなるようですね。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。