雲の底 ~ おそらく大気の不連続面 ~

今日は青空が嬉しかった

 平日の休みの今日、東京では予報に反してほぼ一日青空に恵まれ、私にとっては本当に嬉しい一日となりました。

 9 月もいつの間にか半分が過ぎました。日中は気温が上がり、汗ばむ気温となったしても、日が落ちてくると、途端に過ごしやすくなります。残暑と呼んでも良いのかもしれませんが、堪える暑さはどこへやら、本格的な秋の足音が聞こえるのももうすぐそうです。街路樹の葉も、一枝に数枚ほどは色が変わり始めているものもあります。

 

晴天率の低い白露~秋分期間

 来週には秋分を迎えるこの時期は、実は秋晴れという言葉とは裏腹に、晴天率は低い時期だそうです。事実、1967 年から 1987 年の東京の白露から秋分の晴天率は 33 % から 27 % と、ひいき目に言っても晴れは少ないです(*1)。

 今年 2021 年は 9/7 が白露、9/23 が秋分ですが、確かに、9月に入ってから青空を見上げられたのは数えるほどのような気がします。気象庁の天気図を見ても、この 9 月、15日間で日本付近に停滞前線や低気圧が描かれている日は 10 日以上、それ以外の日も、弱くはっきりしない気圧場下にあり、積極的な晴天が望める状況にはなっていなかったようです。

www.data.jma.go.jp

 

雲の底にある(と思われる)大気の不連続面

 大気の動向が可視化している現象の最も顕著なものが雲だと思います。世界気象機関では雲を、その高さや出来方と形で 10 種類に分けています。これ以外にも、俗称、俗説を含めて様々な雲の呼び名があるようですが、それだけ、私たちの関心をひきつけて止まない存在であるのだと思います。この機会に、雲形 10 種に関するうんちくを傾けてみてはいかがでしょうか。

tenki.jp

 一般論として、飛行機で通過する時、雲底(雲の一番低い部分)付近は揺れることが少なくありません。それはおそらく、雲底のすぐ下付近の高度が、大気の不連続面になっている、という理由によると思います。その不連続面について、見てみることとします。

 

① 冬季の強風軸

 こうした不連続面が大規模に現れる一例として、冬季上空に現れる強風軸(一般にはジェット気流とか偏西風などと呼ばれます)があります。この強風軸の南側下層に形成されている上空の前線帯の暖気側上部には、高層雲のような雲がしばしば見受けられます。上昇中その雲に近づいてゆくと、それまで静かな冬晴れの中の飛行が嘘のように、数分ですがそれなりの揺れに遭遇します。強風軸に入り、風速が急増するためです。もっとも、雲底高度を超えれば、程なく揺れは落ち着きます。強風軸の中にいったん入ってしまえば、また静かな飛行となる場合がほとんどですが、風速は非常に大きく、西行きはなかなか進みません。

 

② 気温が 0 ℃ 位になる中層雲の雲底

 上空の強風軸の前線帯の風の変化は数値予報で明確に現れる場合が多いですが、負けず劣らず揺れるなあ、と思うのが、地上の前線があったり、気圧傾度の全くはっきりしない、弱い気圧場において、外気温度がちょうど 0 ℃前後になる付近の高度です。

 昨日、おととい(9/13、14)も、九州北部から関東にかけてはそういう状況になっていたようで、地上気温が 22 ~ 25 ℃、教科書通り、標準気温減率 (1000 ft で 2 ℃ 減少)前後で気温が低下した、12000 ft から 14000 ft 辺りの中層に、層雲ではないものの、弱い弱い対流雲が形成されていたようです。その雲底では、福岡周辺でも房総半島周辺でも、それはそれは「いい感じ」の揺れが報告されていました。

 もっとも、こうした雲底では、得てして風が非常に弱い、あるいは風向も定まらず弱い場合が多く、おそらく数値予報でも有意な(あくまで航空機の運航という観点からですが)何かが見出せるようには思えません。いつものように MSM を見ても、「風は弱いんだけどかなり揺れたね」、としかならなさそうなので省略しました(笑)。とはいえ、同日の地上天気図を『気象庁の過去の天気図』でご覧頂くと分かるように、気圧傾度が全く以てはっきりしません。一方雲画像を眺めると、活発な対流雲では決してないものの、何となく薄い雲が広がっていたのでした。

 大気、あるいは気団の不連続面には、大なり小なり気象のドラマが潜んでいる、と感じる次第です。

 

台風 14 号 (CHANTHU) の行方は…

 東京は暑さのまだ残る毎日ですが、北日本には、冬場に現れる強風軸がすでに現れています。そして今週末、この強風軸の南下に伴い、台風 14 号 (CHANTHU) が東進、本州を横断する予報となっています。

 一昨年 2019 年には、台風 19 号により、関東では、停電を含め、かなり被害が出ていました。台風に関わらず、停滞前線の活動などで、今年もすでに種々の被害が出ていますが、以前の記事で見たように、今年も降水量の多い一年となっているのでしょうか。ひどい事にならないことを祈るばかりですね。

 

本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

 

(*1) 『日常の気象辞典』 平塚和夫編 東京堂出版 (2000)