年降水量偏差と太陽黒点数の関係 ( は多分ほぼない )

降水量と太陽活動

 先日の記事で、素人考えからすると、太陽活動の強弱で気候の変化が説明できる部分があるのではないかと書きました。

 無線の世界では『サイクル 24 が終わりかけで…』等と言って、太陽活動によって通信に影響が出ることがかつて取りざたされていました。太陽活動周期はおよそ 11 年周期とよく耳にしますが、同じように、気象庁の年降水量偏差と太陽活動には、何か相関が見出せるのでしょうか。 

www.data.jma.go.jp

 

そもそも太陽活動は、どのような指標を使って考えるのか

 経済活動や災害の規模等を考える場合もそうですが、それを表わす指標や基準は色々選ぶことができます。また、選んだ指標や基準の結果への影響の程度も一様ではありません。そもそも太陽の活動周期が約 11 年というのは、何を根拠とするものだったのでしょう。

 太陽活動による効果(Wikipedia へ)は、磁場、放射、電波、爆発、宇宙線等があります。太陽については、記録された長さから、黒点の数、F10.7 太陽電波フラックス(太陽からの電波のピークに近い波長 10.7 cm の電波)等がよく使われ、黒点の数については、400 年にわたる記録があります。

commons.wikimedia.org

 太陽活動を測ることは、宇宙利用の拡大とも相まって、広範多岐にわたるようで、検索する程度では、残念ながらそのさわりすら把握できませんでした(泣)。

 いずれにせよ、太陽活動周期が約 11 年というのは、黒点数の変動周期で、今回も黒点数の変化を太陽活動周期と考えて、年降水量偏差との関係を調べてみることとしました。

 

太陽黒点数データ

 太陽の黒点数データも色々な研究機関が公表していますが、今回は国立天文台三鷹太陽地上観測のデータを使わせて頂きました。1929 年から 2021 年まで日々の数値が公開されており、1929 年からの黒点相対数のグラフも見ることができます。

solarwww.mtk.nao.ac.jp

https://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/image/wolfnumber.png

   Copyright 2017 Solar Science Observatory, NAOJ. All rights reserved. (Above)

 

しばらく眺めてみた結果…

 上のグラフの通り、太陽黒点数は確かにきれいな周期を描いて増減することが分かります。ですが、気象庁の年降水量偏差と比べると…、んー…、

 「時系列変化の状況を見てみると、これはほとんど関連無しかも…」

という残念な予想が見えた気がしました。本当は、pandas を駆使してあれこれやろうかとも思っていたのですが…。ですが、あれこれ調べた半日を一応形にするべく、めげずに可視化と相関を求めてみました。

 

データの準備と整形

 年降水量の偏差は csv 形式、黒点数の年平均値は txt 形式のファイルでした。対象期間は、気象庁国立天文台に共通する期間、1929 年から 2020 年としました。そして、年降水量偏差が 1991 年から 2020 年の 30 年平均からの偏差を使っているので、黒点数に関しても、同じ期間の平均値からの偏差を用いました(あまり意味は無さそうですが)。

 ちなみに1991 年から 2020 年の黒点数の年平均個数は、49.77 個でした。

 

年降水量偏差と黒点数偏差の相関

 年降水量偏差と黒点数偏差の推移を視覚化した結果が以下の通りです。

f:id:ohigehige:20210902171228p:plain

 同じく、df.corr() により相関係数を求めてみると、0.115019。ほぼ無関係ですね…。やっぱり。

 

まとめ

 前回の記事を書きながらふと思いついた、年降水量偏差と太陽黒点数偏差の相関は、ほとんどないことが分かりました(泣、残念)。

 太陽活動を黒点数で代表させ、また太陽から届いたエネルギー(正確にはエントロピーでしょうか)が色々変遷して現れる実に多くの結果の一つが降水であることを考えれば、両者に直接的、あるいは有意な関係を見出すのは、ちょっと無理かもしれませんね。

 蛇足ながら、太陽活動と株価の相関や景気の予想を試みた例も多々あることが分かりました。是非はともかく、人間が太陽や月に何かを見出そうとするのは、因果的に世界を理解しようとする、長年にわたり培われた思考パターンの一つなのかもしれませんね。

 

本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。