気象予報をもう一度見直す - 2021.06.29 -

梅雨の雨

 東日本の梅雨の雨は「しとしと」と降り、西日本の雨は「時々ザーザー」降る、という話を子供の頃よく耳にした記憶があります。もっとも、その頃は、どこで日本を東と西に分けるのかも、あるいは、どの程度の雨を「しとしと」あるいは「ザーザー」にするのかを気にしたことはありませんでした。「しとしと」と降る梅雨の雨以外を目にしたことがほとんどなかったからです。

 こうした梅雨の雨の降り方の違いは、梅雨前線の成因、つまり前線を形成する気団の違いによるものだということを、仕事で天気を眺めるようになってから知ったものです。つまり、東日本の梅雨前線は、寒冷で湿ったオホーツク高気圧と、暖かく湿った太平洋高気圧の境目に位置し、西日本の梅雨前線は、暖かく乾燥した長江気団と、太平洋高気圧の境目に形成されるという違いです。

 

線状降水帯

 今日は全国で初めて、沖縄に線状降水帯発生情報が発表されました。今年から「顕著な大雨に関する情報」が運用されたばかりだというのに、です。必要だからこそ設定するものの、災害に関する情報に早速活躍の場が現れるというのは、あまり嬉しい話ではありません。

www.jma.go.jp

 線状降水帯という言葉は、この情報の中で使われるものですが、去年の 7 月、九州で線状降水帯の降水により、ひどい災害が引き起こされたことは記憶に新しいところです。

 気象庁の定義としては、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域」です。ニュースなどで解析雨量の推移の早送りを見てみると、確かに強雨域が線上で、ほとんど動いていないことが分かります。

 

地上天気図的には

 東京では夜中から今朝未明にかけ、窓を打つ雨音に何となく目が覚める位、激しい雨が降っていました。もっとも、関東南部、梅雨前線上を低気圧が通過していたためで、梅雨の雨というよりは、低気圧による嵐、といった感じでした。

 一方、線状降水帯の発生が報じられた沖縄では、沖縄本島の北、北緯 28、9 度付近に梅雨前線が位置していました。梅雨前線のすぐ南に位置していたわけですが、どんな風の場だったのか、いつもの通り、解析と予報を見てみることとしました。

 

気象庁 MSM 予報によると

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 上図は、2021 年 6 月 29 日 03L と 06L の、沖縄本島を中心とした、地上 300m(だいたい雲底の高さ)、および地上 1500m の風の様子です。

 沖縄本島の南東部では南西の風が卓越する一方、西側では西風場となっています。沖縄本島西南西域ではほぼ無風域が形成され、その分、ちょうどこの 2 方向の風が沖縄本島付近で収束し、対流雲ができたであろうことが分かります(下 2 図)。また、本島北部には、梅雨前線に対応する風速の弱い部分があり、その北側では、確かに北東~東北東風場となっています。

 風が変化する場が那覇空港周辺を通過したのは、朝 4:30 ~ 5:00 位のようですが、その時の METAR は以下の通りで、ひどいものでした。

282000Z  33012G25KT 290V010 1000 R18L/0800V1400U R18R/0750V1200N +TSRA FEW003 SCT009 BKN015 SCT025CB 24/23 Q1005
281949Z  29013G24KT 260V330 4000 R18L/1200VP2000D R18R/0900VP2000D +TSRA FEW004 BKN012 FEW025CB 25/24 Q1006 RMK 1ST004 6CU012 2CB025 A2971 FBL TS 5KM N MOV E P/RR
281930Z  19013KT 4000 +TSRA FEW008 FEW020CB BKN025 BKN050 27/26 Q1004 RMK 1ST008 1CB020 5CU025 5SC050 A2966 FBL TS 15KM N MOV E

 

終わりに

 例年であれば、沖縄はすでに梅雨明け、そろそろ奄美も明けるかな、という頃ですが、今日の梅雨前線の位置を見る限りでは、もう少し後になりそうですね。今回も、「時々ザーザー」と降る典型例なのかもしれませんが、実害が極力ないことを願うばかりです。

 

 本日も最後までお付き合いありがとうございました。