海陸風を見直す - 2021.12.05 松山空港 -

陸風の宝庫

 国土が狭いにもかかわらず、山がちで四方を海に囲まれ、おまけに島も多いとくれば、移動のためのコストは少なからず避けられない。日本の現実は、やはりここにあるといつも思います。もっとも、それは、豊かで多様な環境を享受できるということでもあります。食にせよ、生活文化にせよ、観光資源にせよ、それは自然の影響を大きく受けた多様性と言えます。

 移動の方法としては、陸上、海上、空があります。その規模については、大量輸送が必要な場面もありますが、個別輸送手段も不可欠な部分が本当にたくさんあります。

 今のところ、空については、概ね大量輸送が大半を占めているため、国土の制約の割には、日本は空港数が多いように思います。もっとも、制約や制限を設けたとしても、少なからず広い敷地を要する空港は、必然的に、郊外へ、海の側へ、はたまた海上へと押しやられる運命にあります。その結果影響を受けるものとしては、海陸風があります。総観規模の気圧配置に比べれば局地的ではありますし、海と陸の境界の存在する場所には海陸風の発生する状況が存在するので、そういう意味では日本では至る所で、海陸風が見られる、と言えるのですが、その中であえて例を挙げるとすれば、例えば、夏には宮崎(RJFM/KMI)、あるいは冬には松山(RJOM/MYJ)等があります。

 

陸風とは

 海陸風は、陸地と海の温度差によって風が生じる現象で、一般的には、日中帯は熱せられた陸地で上昇気流が相対的に強くなり、結果として海から風が吹き込みます。一方、海は熱せられにくく冷めにくいことから、夜間には陸地と比べて相対的に温度が高くなり、結果として陸地から海に向かう陸風となります。もっとも、熱の伝導には時間がかかるので、太陽が南中した時間から少し時間を経て地面温度が最高となり、更にそれに遅れて、最高気温を迎えることとなる、というのはご存知の通りです。

 では海陸風と思われる状況が顕著に表れている時の海面水温と気温はどうなっているのでしょう。

 上の図は、気象庁の日別海面水温からお借りした、2021 年 12 月 5 日の親潮域における海面水温の分布です。松山空港周辺の海面水温は、18、9 ℃となっています。

www.data.jma.go.jp

 一方、同日の松山空港(RJOM/MYJ)における、午前 9 時(00Z)から午後 9 時(12Z)までの支障の推移は以下の通りでした。

METAR RJOM 051200Z 11005KT 9999 FEW030 08/02 Q1028= 
METAR RJOM 051100Z 12004KT 9999 FEW030 BKN/// 08/02 Q1028=
METAR RJOM 051000Z 11006KT 9999 FEW030 BKN/// 09/02 Q1027=
METAR RJOM 050900Z 07003KT 040V100 9999 FEW030 10/01 Q1027=
METAR RJOM 050800Z 04006KT 9999 FEW030 11/03 Q1027=
METAR RJOM 050700Z 02013KT 9999 FEW030 12/03 Q1026=
METAR RJOM 050600Z 02014KT 9999 FEW030 12/02 Q1027=  
METAR RJOM 050500Z 36016KT 9999 FEW025 13/02 Q1026= 
METAR RJOM 050400Z 35013KT 9999 FEW025 13/02 Q1027=
METAR RJOM 050300Z VRB03KT 9999 FEW020 12/01 Q1027=
METAR RJOM 050200Z 01009KT 340V040 9999 FEW020 12/02 Q1028= 
METAR RJOM 050100Z 06005KT 360V120 9999 FEW020 SCT040 11/02 Q1029=
METAR RJOM 050000Z 15003KT 110V190 9999 FEW020 07/03 Q1028=

 午前 11 時頃から海風がはっきり見て取れるようになり、午後 5 時過ぎるとはっきりしなくなっています。一方、陸風については、午後 7 時以降、午前 9 時頃まで卓越しています。海陸風の影響のみとは断定できませんが、海風の時間帯には気圧がやや下がり、陸風の時間帯にはやや上昇しています。

 

気温と路面温度の違い

 もっとも、気温自体は、海風が卓越する時間帯を通じて 11~13 ℃程度で推移しており、海面水温より高くはなっていません。地表面温度は日射によって、おそらく気温より高くなっていると思われますが、定量的に何℃くらい高くなるかを見積もるのは案外難しいようです。例えば、『気温 路面温度 違い』等のワードで検索をかけてみると、路面の材質や季節による違いなのに関する土木関連の研究結果がたくさん出てきます。

 精度や方法はともかくとして、実際に測定した方の例をあげれば、夏季に気温が 36 ℃程度であった時、日向の路面温度は 64 ℃、日陰は 30 ℃だったそうです。また冬季には気温が 3 ℃程度でも路面が凍結するそうです。

 松山空港の場合、遮るもののほとんどない日向ですので、日射がある時間帯には、路面温度は、冬季といえども気温より少なくとも 7 ℃以上は高くなる(つまり、空港表面が 19~20 ℃以上となる )時間帯があり、そういう時間帯には、空港表面は海面水温よりも高くなり、海風の卓越する状況が発生すると考えられます。

 海陸風が海と陸地の表面温度の差、つまり、日射による比熱差に起因していることから、気温を見て海陸風の発生時期を予測するよりは、日射の状況(つまりその日の天気)から予想する方が状況に即した予想が得られそうですが、晴れとか曇りという情報では、定量的になりませんね。冬季は日中 11 時から 5 時位まで海風になりやすいという、現場の経験則を出られませんでした(笑)。

 

 今日東京では久しぶりに曇空です。個人的には、気温よりも日が短くなったことで、季節が冬本番へと向かっていることを実感します。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。