気象予報をもう一度見直す - 2021.07.03 -

はじめに

 沖縄で線状降水帯の発生が伝えられてまだ1週間も経っていないというのに、数日前には伊豆諸島の新島でも線状降水帯が発生したことが伝えられました。そして、昨日は熱海市伊豆山地区では土石流が起きました。現地にいた方の撮影した動画の伝える生々しさには、全く言葉もありません。

 確かに今月に入ってから東京では、夜半から昼前にかけて、時に激しい雨が断続的に降り続く日が続いています。朝の窓の外は雨、それでも何故か昼前後には止んで、午後は何とか曇りで持ちこたえる毎日が、今日で4日続いています。

 

土石流

 国土交通省の HP によれば、「石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流されるもので、 その速さは規模によって異なりますが、時速20~40km」ということです。 ニュースでも、土石流の速さは時に秒速10m 位にもなる、とも報じられていましたが、つまり、土石流は、短距離走選手並みのスピードで襲い掛かってくる、ということです。

www.mlit.go.jp

 上の HP には過去の土石流災害の事例も紹介されており、土石流は日常的に起こるわけではなさそうですが、日本のように山がちな国では、残念ながら決して稀というわけでもないようです。

 熱海市は家族や友人との旅行、学生時代には合宿など、幾度となく足を運んでいる所でした。自分の良く知る場所が、生々しい災害の現場になったことには、やはり衝撃を感じずにはいられませんでした。

 

地上天気図的には

 とりわけ7/2 ~ 3 にかけて、梅雨前線は静岡、神奈川、千葉県南岸に停滞し続けていました。総観的には伊豆半島は、雨が降る条件は揃っていたわけですが、いつも通り、もう少し細かく確認してみることとします。

 

気象庁 MSM 予報によると

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 上図は 2021 年 7 月 3 日 09L の上空 300m および 1050 m の風の解析です。左図 300 m の風の状況は概ね地上天気図の梅雨前線に対応する風の不連続帯が見て取れます。

 伊豆半島やその北側は、そもそも山が多く、富士山は別格として、愛鷹山、達磨山、天城山箱根山など、1000 m 前後の山々が連なっています。そのせいもあり、山の標高よりも低い高度では南西の風が卓越していても、山で風の流れが止められることが見て取れます(左 地上300m、青色域は風が非常に弱い)。上空 1050 m程度になれば南西風場となりますが、それでも、風の流れは、富士山や丹沢、大山をはじめとする国立公園の山に遮られるようです(右 1050m)。

 つまり、太平洋からは暖かく湿った大気が南西風に乗ってどんどん運ばれていましたが、それは山に遮られ、おそらく斜面により強制上昇し、それにより発達した対流雲がひたすら雨を降らせる状況にあったことが窺えます。

 大規模な土石流が発生したのは、この 1 時間 40 分ほど後のことだったそうです。

 

終わりに

 地形の影響を受けない気象、というものは無いのかもしれませんが、今回の伊豆半島の気象は、風向場と地形的特徴により大筋は理解できるようです。

 また、数日間で例年の 7 月一か月分をはるかに超える雨が降ったことが分かっています。数日間湿った大気が運ばれるだけで、一か月分を超える雨を降らせるだけの水分が供給されるのかどうか、定量的な側面、検証は分かりませんが、ごあいさつでも書かせて頂いたように、ひとたび災害が起こった時の最大値、極値が、近年経験や予想以上に大きくなっている気がします。

 

 現在進行形の災害を机上で review するのは大変心苦しいのですが…、これが現実、自分たちが住む地の特徴に向き合う契機とさせて頂こうと思います。

 本日も最後までお付き合いありがとうございました。