気象予報をもう一度見直す - 2021.10.29 - 見上げた空の先

あと数日で 10 月も終わりですね

 数週間前には日中の最高気温が 30 ℃に届きそうになる日が何日もあったと思いますが、この半月余りで一気に季節は進みました。其処彼処で日に日に樹の葉が色づき、本格的な秋の訪れを感じるようになりました。一方上空には、「ジェット気流」としばしば呼ばれる、冬特有の強風軸が日本周辺にはっきり現れるようになっています。風速は、真冬ほどはまだ大きくありませんが、九州など西行きの旅に要する時間は、すでに急激に長くなりました。

 天気を振り返ってみたいと感じる時は、大体申し分のない気持ちの良い青空の休日だったりします。雲一つない晴天であっても、運航自体が危ぶまれる悪天であっても、数日間仕事をしている間に、たいていの気象現象は日本周辺を過ぎ去って行きます。いつまでも続く追い風もない代わりに、止まない雨もない…。日本の位置する中緯度、大陸の東側は、低緯度から高緯度への熱循環が引き起こす気象現象のショーケースのような場所です。

 

地上天気図的には

 未明に小笠原諸島を通過したであろう台風 20 号が足早に北東進、また中国大陸から張り出す高気圧に日本全体が覆われる、安定した天気の一日でした。東京は台風の進行方向後面、高気圧の東側に位置していたため、北~北東寄りの爽やかな風が吹いていました。見渡す限り、ほぼ青い空が広がっていたので、上空には強風軸が東西にしっかりと走っているに違いない、と思っていたのですが…。

 

気象庁 MSM による御茶ノ水駅界隈

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 上図は、本日 2021 年 10 月 29 日午後 3 時における、東京、御茶ノ水駅上空の気温と露点、そして風の鉛直分布予報です。気温と露点は大きく離れ、乾燥した大気に覆われていたことが見て取れます。高度と共に気温は下がり続けており、対流圏界面はもう少し上にあるようです。

 もっとも、850 hPa (1,500m) では気温と露点が接近しています。遠くにまばらに見えた雲は、この辺りの高度に出来ていたのかもしれません。

 風についてですが、600 hPa(大雑把に富士山の高さ位)までは地上で感じた様に確かに北寄りの風ですが、300 hPa (11,800 m) 以上では南南西の風となっています。実際、国内悪天予想図 (FBJP) では、35,000 ft に中心を持つ強風軸が関東地方南部上空から太平洋上へと北東進する予報となっていました。

(高層、専門天気図等に興味のある方は例えばこちら等どうぞ↓)

www.sunny-spot.net

 冬季によく目にする西高東低の気圧配置時には、北の冷たい空気と、南の暖かい空気によって形成される不連続面、南北の温度差に起因する前線面が上空に東西方向に形成され、強風軸はその前線面上部に位置します。

 今日も、北西に高気圧、南東に台風という、何となく西高東低もどきの気圧配置でしたが、まだそこまで寒気も強くないのでしょう。むしろ台風と共にやってきた、南東に位置する暖かく湿った大気が顕著で、その大気に隣接する西~北西の寒気との間に不連続面が出来たのでしょう。結果として、南南西~南西から北東~北北東方向に走る強風軸が形成されたとのだと思われます。

 

見上げた空の先

 世界が立体的である限り、それを記述する手段として、「広くかつ深く」を追求することは全く自然なことです。もっとも、人間が一時に把握できる情報量というものには、おそらく限りがあるとも思います。広く地域を把握しようとすれば浅くなり、限られた地点に留まる場合には深く、あるいは遠くまで見通すことも出来るかもしれません。

 日本では、天気は基本的に西から変わって行くので、その変化を見る場合には、地図上で水平分布を把握することが圧倒的に便利です。それでも、澄んで高くなった空の先はどうなっているのか、時には知りたいと思ったりもします。ということで、先日試みた温度の鉛直分布表示(その1その2)に風を加えて見直してみました。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。