既にあるよりも近づいてくるものに注意? - 2021.12.15 - 近づくジェット気流の先端 -

「うまく行かないこと」ってありますよね

 いろいろ言ったところで、やはり「~れば、~たら」ほど意味のないものはない…。

 そうです、やっぱりうまく行かないよりは、単にラッキーでもうまく行く方が良いものです。少なくとも、気持ち的には楽です。

 とはいえ、全てが予想されているとしたら、おそらくそれは安心というよりは退屈かもしれません。一方、予想を裏切られ続けるとしたら、それもおそらく苦痛としか言えなさそうです。

 経験やレビューは、見通しを徐々に正確にしてくれますが、完璧な対策ではありません。むしろ、単にそれ以外に方法がないということでしかないとも言えます。そういう意味で、「失敗は成功の元」という言葉は、事実であると同時に、それ以上に希望なのかもしれません

 ということで、本日は『近づくジェット気流』についてレビューをしたいと思います。

 

総取り、あるいはトレードオフ

 冬のジェット気流と呼ばれる強風帯の風速は、それほど強くなくとも時速 200 km/h 以上で、新幹線の速さ 300 km/h を超えることもしばしばあります。強風帯の軸の中は、風速が安定しているため、渦が出来ず、揺れがほとんどないからです。もっとも、そうした向かい風の中を飛行することは、例えて言うならば、3 歩進んで必ず 1 歩下がることを繰り返して目的地を目指す方法です。風速が大きい時には、当然ながら飛行に要する時間は長くなります。

 定時運航が商品価値の一つである以上、揺れが許容できるのであれば、向かい風の弱い所を選択し、定時運航に余裕を持たせようとするのは、ある意味運航者の職業的本能とも呼べます。もっとも、運悪く前線帯を避けることが出来なくなった場合には、いわゆる気流の悪い中の飛行となり、場合によっては、快適という別の商品価値を損なうことにもつながりかねません。

 寒気と暖気のせめぎ合いにより、天気図上で東西に走る強風帯が南北に上下する場合には、それに合わせた予想は立てやすいですが、強風帯の蛇行している時や変化が大きい時、強風帯が接近してくる場合等は、どの程度の影響があるかはなかなか見通しにくいものです。

 

理由を見出せない状況

 12/15 午前は、東日本では前日までと同様の平和な揺れの無い状況でしたが、琵琶湖を超えた辺りから、20,000 ft 台中間以上の色々な高度で揺れが始まり、揺れの無い高度があまり見当たらないような状況だったようです。

 ということで、松江と潮岬の高層大気の観測値を見ながら、西日本の状況を振り返ってみることとします。

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 上図は、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして図示した、2021 年 12 月 15 日午前 9 時における松江(左)および潮岬(右)の大気鉛直方向の気温および露点、そして風の分布です。

 昨日の記事で見たように、24 時間前には松江でも潮岬でも、気温は 1000 hPa から 100 hPa に向かってほぼ一定に下がっていましたが、一日経過した 12/15 には、300 hPa 辺りに対流圏界面が形成されたことがはっきり見て取れます(ご興味のある方は見比べてみて下さい)。

 国内悪天予想図によれば、それまでなかった、九州北部~瀬戸内海上空の高度 29,000 ft(およそ8800m)に軸を持つ 110 kts の強風帯が、同時刻に描画されました。

 過去の記事『県界面付近の揺れ』でも書きましたが、圏界面付近は渦が無い時には揺れが無く平和そのものですが、渦が出来ている時には、相対的に安定成層である分、その状況が解消するのには時間がかかるように思います。

 

 なぜこれほど顕著に気温変化が現れたのかは、裏付けのあるきちんとした理由は正直分かりませんが、強風帯の位置が、前日から九州西~南部に中心を持つ高気圧が位置していたことから、高気圧域と、その北の寒気域の温度差が 1 日以上経過して顕著となり、寒帯ジェットの形成に至った、その結果、強風帯寒気側、強風軸高度辺りに圏界面が形成された、という状況であったのではないかと思ったりします。

 

 ですが、この日、午前 9 時にはそれまで何の悪天予報も無かった西日本に、29,000 ft に軸を持つ強風軸が予想されていることを運航が始まる前に入手出来ていれば、あるいは高度選定の見通しは変わったのでしょうか…。それはさておき、私は、終わったことは数歩で忘れてしまうため、今日もこうして忘備録を残して行くのです。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。