千歳の雪

今年は千歳の雪がなかなかスゴイ

 この 1,2 年、(実際にはどうなのか分かりませんが)千歳の雪はどちらかというと少なめ、あるいは、少なくとも航空機の運航に多大な影響が及ぶほどだったことは稀、というのが現場の肌感覚でした。もちろん、雪がないわけでは決してありません。ですが、影響を受けた場合がそれほどではなかったため、何となく少ない、これも温暖化と影響があるのだろうか、等と話したものでした。

 しかし、まだ全く終わってはいませんが、この冬、少なくとも先月クリスマス時分以降の雪の降り方は、正直半端ない気がします。新千歳航空測候所では、今月に入ってから、まだ 16 日なのですが、すでに 3 回大雪に関する気象速報を発表しています。

www.data.jma.go.jp

 

新千歳空港の降雪特性

 新千歳空港は、札幌をはじめとする北海道への玄関口ですが、札幌で大雪だからといって、千歳も大雪となるとは限りません。むしろ、札幌からそう遠くないにもかかわらず、雪は少なめです。札幌は日本海側の気象傾向を持つと言えますが、千歳は山で少なからず遮られているため、太平洋側の気象特性をも併せ持ちます。そのため、札幌とは雪の降る場合の傾向が異なります。だからこそ、自衛隊も基地を置き、また民間飛行場の地として選ばれているもと言えます。

 とはいえ、Google map 等で地形を眺めていると、千歳で雪が降るパターンが何となく見えてきます。現場での経験則としてよく言われているのは、次の 2 つのパターンです。

 ① 風向が北西の場合で、石狩湾からの雪雲が札幌市を通過し、流れ込んでくる

 ② 風向が南寄りの場合で、海からの風が地形で収束する

つまり、千歳の雪も、地形の影響を大きく受けた地域特性と言えます。では、この経験則を体系的に扱ったものはあるのでしょうか。ちょっと検索をかけてみました。

 

『千歳空港における 6 時間降雪量の特性について』

 観測データや気象情報を除くと、上の名前の論文が一番最初にヒットしたのですが、この論文は、千歳航空測候所の方が執筆した 1977 年(!)のものでした。

https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1977/1977_05_0265.pdf

 半世紀にはならないまでも、45 年前の論文が検索上位に出てくるということは、伝説の論文なのかと思い、拝見しました。現在にこの結果がそのまま当てはまるかどうかは分かりませんが、論文の示唆する知見は、ざっくり言えば以下の通りでした。

<知見①> 降雪量は 1 月が最多、次いで 2 月、12 月

<知見②> 降雪量最多は、850 hPa の風向が 310 ~ 340°、風速 30 kts 以上の場合。つまり、石狩湾から大気が流入し、風速が大きいため、水蒸気量が多く、地域的収束も大きく、多雪となる。

<知見③> 次いで、風向が南東~南寄りの場合で、確率的には、最多の場合の半分程度。3 番目に、850 hPa の風向が 310 ~ 340°、風速 20 ~ 30 kts の場合。確率的には、最多の 1/4 程度。 

 ん-、まさに現場の経験則そのものです。変化の激しいこのご時世に、半世紀近く有効な経験則というのも、なかなか有難いものです。

 

現時点における今シーズンの傾向

 以上のように、千歳で多雪となる場合には、北西風が強い場合と、南東~南寄りの風となる場合がありますが、現時点ではそのどちらの場合も、よく起きています。それは、2 つの理由によるのでは、と考えています。

 ① 西高東低の気圧傾度が大きい。低気圧が例年以上に発達するためか、結果として、気圧傾度が大きくなる。 → 北西の風が強くなりやすい。(1/1, 13-14 のパターン)

 ② 津軽海峡から北海道中心部が低気圧の通り道になっている。(昨シーズンは、どちらかと言えば、北海中央から北部を通過しているものが多め) → 南の海上から湿った雲が流れ込みやすい。(1/11-12 のパターン)

 まあ、あくまでざっくりですが、昨年や例年目にする地上天気図と比べると、今シーズンは、現段階ではそんな傾向があるように感じたりもします。

 

 今週 20 日には大寒、最も寒さの厳しい時期を迎えます。ウイルス、気象の影響のみならず、火山による津波の影響にも目配りしなければいけない世の中になっているみたいですね。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。