春霞 - 2022.03.08 ~ 09 -

すっかり春らしくなりましたね

 3 月になってすでに 10 日、東京でも春一番がすでに吹き、春めいてきたというよりも冬はもう遠のいた、そう感じるのは私だけでしょうか。

 みなさんは、どんなものに春を感じるのでしょうか。学校行事、年度末の仕事、街の神社やお寺の片隅に咲く梅の花等、その兆候は色々ありますが、空の上の兆しとしては、ジェット気流が弱まることが挙げられます。そして、日に日に強くなる陽射しのおかげで、空が明るさを増すようになります。

 

春霞

 確かに空の明るさは増すのですが、一方で春の青空は、冬の抜けるような青空とはちょっと異なります。景色や空の見通し距離がやや落ちる現象は、一般的には春霞と呼びます。大気中の水蒸気量が増えるため、背景がかすんで見えることを表す言葉です。それは例えば、植物から蒸散する水蒸気量が多くなったり、あるいは南からの湿った空気が流れ込みやすくなるためであったりします。

 雨上がりのこの時期、四国山地中国山地の山端では、まさに春霞と形容するにふさわしい霞がたなびくのをよく目にしますが、見通しが落ちる原因は、もしかしたら大気中の水蒸気量の増加だけではないのかもしれません。時に、黄砂や花粉も飛来します。また成田では有名ですが、春一番のような強風が吹く時には、冬の間に乾いた畑の表土が巻き上げられ、BLDU(Blowing Dust:高い風じん)と呼ばれる視程障害現象が発生します。こうしたものも確かに季節の風物ではありますが、埃っぽさと春霞には、風情という観点から、やはりちょっと線を引きたいものだと個人的には感じます。

 そして、霞むのは地表付近だけではありません。上空でも、大気の性質による不連続面が出来るのでしょうか、薄い層のようなものをしばしば、時に数層目にするようになります。もっとも、いずれもそれほど厚くなく、長い時間持続しているわけでもないのですが、そうした層の付近の高度では、渦とまでは言わないまでも不連続層が出来ているようで、冬場のジェット気流の前線帯のような大きな揺れに遭遇するわけではありませんが、軽い揺れを経験することがしばしばあります。

 冬の間の乾いた大気に日に日に加わる潤い、それが霞という形で目にするのだとすれば、季節はやはりもう春なのでしょうね。

 

3/8、9 の大気の鉛直分布

 おととい 3/8 は最高気温が 10 ℃に届かない、雨のぱらつく寒い一日でしたが、昨日 3/9 を含め、2 月末位からは、日中は寒さを感じないことが増えました。

 館野を例にとり、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして、観測値を確認してみました。

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 上左図は 3/8、上右図は 3/9 の館野における気温と露点、および風の鉛直分布です。

 日中の気温が上がる前の気温は 5、6 ℃で同じですが、曇っていれば気温は上がらず、晴れていれば、気温は 10 数℃まで上がります。日射が強くなってきたことが窺えます。

 上空の気温分布に有意な違いがあるわけではありませんが、薄い層のように見えた高度帯は、450~480 hPa 周辺、20,000 ~ 24,000 ft 付近でした。少し逆転層のようになっている高度帯ですね。

 右 9 日上空の風速は50 ~ 70 ktsと、この冬ジェット気流の風速が大きい時には 200 kts を超えていたことがしばしばあったことを思うと、実に mild になったものです。

 

霞、それとも単に曇り?

 春は晴れても霞んでいる、と暖かくなってきたことを喜んでいますが、実は曇っているだけなのかもしれないと感じさせる言葉もあります。そうです、桜の時期に使う「花曇り」です。東京では週末、20 ℃ を超える予報が出ています。寒暖の差が顕著になれば、春分を迎える前に桜の開花を耳にするのかもしれませんね。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。