春の天気は速く大きく変化する - 2022.03.21 - 東北地方における気圧の谷の東進

春の雪

 おととい 3/20、東京でも桜の開花が発表されました。上野の不忍池東京芸術大学でも、蕾が綻び桜色の花びらが見えていたり、あるいは日当たりの良い所では、すでに2、3 分咲いている木もあります。ということは、平均的には、来週半ば以降が見頃ということになるのでしょうか。

 しかし、本格的な春の訪れを感じさせる桜の開花が報じられると、どういうわけか、急に季節が逆戻りしたかのような寒の戻りに見舞われることがよくあります。実際、今日の東京は天気予報通り、昼前後を中心にしばらくの間結構雪が舞っていました。同じ雪が降るとしても、「春の雪」と言うと、身を屈めるのではなく、顔を上げ空を仰ぎたくなるような想いに駆られるのは私だけでしょうか。

 

電力需給ひっ迫警報

 もっとも、暖かさに慣れてきた後の寒さのため、今日 22 日は電力需要のひっ迫が予想され、節電要請が行われています。先日 16 日の福島県地震の影響で、福島県の火力発電の稼働が停止しているためとの事です。

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 経産省がこの警報を出すのは初めてのことのようですが…、世の中には色々な警報があるものですね。やはり、東京圏の生活規模が依然として大きいのでしょう。

 東日本大震災直後には、原発の影響を懸念して地方に移住するということを少なからず耳にしました。現在のコロナ禍では、テレワーク拡大等で住む場所に関する選択肢が増え、東京から転出増加が指摘されていますが、落ち着きを取り戻した時、結局どのような姿になっているのでしょう。

 

春の天気は速く大きく変化する

 春は、暖かさや目に映る彩りが日ごとに増して行くことに気持ちが向いていますが、今日のような寒さや悪天にもそれなりに見舞われます。実際、先日 18 日から 19 日もひどい雨でした。これはこの時期、本州付近がちょうど移動性の高気圧・低気圧の通り道になっており、発達した低気圧が通過したためです。

 例えばこの数日間の地上天気図をご覧頂くと分かるように、移動性高気圧は時速 20 ~ 35 km 程度、つまり一日で 500 ~ 900 km 移動するので、天気もその速さで変化します。また、真冬並みの寒気と同時に、南の暖気もしっかり流入するようになるため、寒暖の差が急激です。洋服で上手に寒暖の調節をして下さいと言われるのはそのためでしょう。

 そして、この速く大きな大気の変化は、上空の大気にも当てはまります。春の飛行機の旅は、予想以上に揺れることが多いのです。

 

上空の大気の 12 時間における変化

 3/21 は朝鮮半島から移動性高気圧が東進しており、関東から東北は晴れ、ないし曇りの春らしい一日でした。もっとも、高気圧の東進に伴い、上空では気圧の谷が通過しており、高度 31,000 ft および 36,000 ft に中心軸を持つジェット気流が形成する気圧の谷が東進していました。

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 上図は、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして図示した、2022 年3 月 21 日 午前 9 時(左)および午後 9 時(右)の秋田における気温、露点及び風の鉛直分布です。

 航空機が飛行しているのは、主に 300 ~ 200 hPa(約 30,000 ~ 38,000 ft)ですが、この半日の間に、風速は 50 kts 程度増速しました。一方気温は 300 hPa では数℃上昇、200 hPa では 5、6 ℃下降しています。つまり、航空機の水平飛行に使う高度帯では、相対的に下層がより暖かく、上層がより冷たくなり、不安定さが増したと言えます(気圧の谷なので、当然と言えば当然ですが…)。圏界面に関して言えば、午前 9 時には 373 および 165 hPa に形成されていた圏界面が、午後 9 時には 185 hPa が第一圏界面となりました。31,000 ft に中心軸を持つジェット気流に関連する圏界面が、ジェット気流の東進と共に消えたと思われます。

 航空機の巡航する高度帯では、、大気はより不安定となり、風速は増大し(水平方向に渦が出来やすくなり)、鉛直方向にも風速差が大きくなった(鉛直方向にも渦が出来やすくなる)となれば、揺れる要素満載です。タイミングによっては、北海道に向かう路線は、それなりの揺れに遭遇したことと思います。

 案外安定していたのは、朝晩曇りで 5 ℃程度だった、地上付近なのかもしれません。

 

 現在午後 9 時を過ぎました。どうやら停電は免れているようですね。それとも安心するにはまだ早いのでしょうか。

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。