ゲリラ豪雨あれこれ

ゲリラ豪雨

 関東でもこの数日、毎日ゲリラ豪雨に見舞われています。今日も昼頃、東京品川界隈では、ニュースになる位の酷い土砂降りに見舞われました。

 ゲリラ豪雨という言葉は日常生活ではすっかり定着しているようですが、天気予報で使う用語としては公式なものではなく、「局地的大雨」あるいは「集中豪雨」が正式のようです。

www.jma.go.jp

 

強い雨の激しさ

 急発達した積乱雲等から雨が降る場合には、単に雨の強度が強いだけでなく、雲から一時的に強い風が吹き出ることも相まって、傘が役に立たないと感じることもままあります。

 雨の強さと実際目にする状況はどのように対応しているのでしょうか。気象庁の基準を見てみました。

www.jma.go.jp

 日常生活では、どうやら 20mm/hr 以上位になってくると、すごい雨、と言いたくなりそうですね。

 航空気象でも空港の気象状況に『RI++』という情報が付くことがあります。この意味するところは、『Remarkable Rainfall Intensity』で、降雨強度が 30mm/hr 以上となると報じられます。

 

災害につながりかねない雨の量とは ~ 確率降水量 ~

 熱海市伊豆山地区で土石流が発生してから、はや 10 日となります。それ以降、今日まで毎日のように日本各地の局地的大雨が報じられています。その時の積算降水量については、大体「わずか一日で」とか「たった数日で、例年の 1 か月を超える雨が降った」とよく言われます。

 これだけ例年の平均から逸脱しているように見える状況が報告されるのであれば、そもそも平均と言うのは、どの辺りにあるのでしょうか。気象庁では、何年かに一度起こる降水で、どのくらいの降水が予想されるのかということを「確率降水量」という概念を導入して、算出しています。

www.data.jma.go.jp

 これによると、30 年に一度の雨では、例えば熱海市では 200 mm後半となっており、先日の雨は、30 年に一度を上回る頻度でしか予想されないことになります。住民の方が、こんなのこれまでの人生で経験したことがない、と口々に言うのは理に適ったこととなります。

 

必然との付き合い方

 東海道新幹線の車内アナウンスで「小田原~熱海間では安全を確認しながら走行するため、速度を落として走行します」、といったことが言われ、大雨の影響はまだ残っていることを感じさせられました。事実、車窓からの街並みをしっかり眺められる位の速さでした。

 湯河原を過ぎてすぐのトンネルを抜けたその瞬間、細い、崩れた斜面にオレンジの作業着姿の人たちが、何十人も作業に当たっている景色が飛び込んできました。生々しい現場に、災害がまだ現在進行形であることに気づかされます。

 梅雨前線が本州付近に停滞すれば、太平洋高気圧の周囲を回って流れ込む南寄りの風が、日本の山の斜面にぶつかって雨を降らせるのは、残念ながら必然とも言えます。理由や原因を求めることも必要ですが、手持ちの情報を最大限に活用して何とか最善を尽くす、気象を制御することが出来ない今は、それに尽きるのかもしれません。

 

終わりに

 九州と中国地方では梅雨明けになりました。局地的大雨に見舞われるものの、毎日の気温も確実に上がっています。むっしり湿度の高い、重たい空気の感触。夏はもうすぐですね。

 今回は、最近感じていた疑問、「どのくらい降る雨が例年並み、普通と言えるのだろう」ということに関し、あれこれ調べてみました(基本的に、気象庁へのリンクですが…)。 

 本日も最後までお付き合いありがとうございました。

気象予報をもう一度見直す - 2021.07.03 -

はじめに

 沖縄で線状降水帯の発生が伝えられてまだ1週間も経っていないというのに、数日前には伊豆諸島の新島でも線状降水帯が発生したことが伝えられました。そして、昨日は熱海市伊豆山地区では土石流が起きました。現地にいた方の撮影した動画の伝える生々しさには、全く言葉もありません。

 確かに今月に入ってから東京では、夜半から昼前にかけて、時に激しい雨が断続的に降り続く日が続いています。朝の窓の外は雨、それでも何故か昼前後には止んで、午後は何とか曇りで持ちこたえる毎日が、今日で4日続いています。

 

土石流

 国土交通省の HP によれば、「石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流されるもので、 その速さは規模によって異なりますが、時速20~40km」ということです。 ニュースでも、土石流の速さは時に秒速10m 位にもなる、とも報じられていましたが、つまり、土石流は、短距離走選手並みのスピードで襲い掛かってくる、ということです。

www.mlit.go.jp

 上の HP には過去の土石流災害の事例も紹介されており、土石流は日常的に起こるわけではなさそうですが、日本のように山がちな国では、残念ながら決して稀というわけでもないようです。

 熱海市は家族や友人との旅行、学生時代には合宿など、幾度となく足を運んでいる所でした。自分の良く知る場所が、生々しい災害の現場になったことには、やはり衝撃を感じずにはいられませんでした。

 

地上天気図的には

 とりわけ7/2 ~ 3 にかけて、梅雨前線は静岡、神奈川、千葉県南岸に停滞し続けていました。総観的には伊豆半島は、雨が降る条件は揃っていたわけですが、いつも通り、もう少し細かく確認してみることとします。

 

気象庁 MSM 予報によると

f:id:ohigehige:20210704124356p:plain

 上図は 2021 年 7 月 3 日 09L の上空 300m および 1050 m の風の解析です。左図 300 m の風の状況は概ね地上天気図の梅雨前線に対応する風の不連続帯が見て取れます。

 伊豆半島やその北側は、そもそも山が多く、富士山は別格として、愛鷹山、達磨山、天城山箱根山など、1000 m 前後の山々が連なっています。そのせいもあり、山の標高よりも低い高度では南西の風が卓越していても、山で風の流れが止められることが見て取れます(左 地上300m、青色域は風が非常に弱い)。上空 1050 m程度になれば南西風場となりますが、それでも、風の流れは、富士山や丹沢、大山をはじめとする国立公園の山に遮られるようです(右 1050m)。

 つまり、太平洋からは暖かく湿った大気が南西風に乗ってどんどん運ばれていましたが、それは山に遮られ、おそらく斜面により強制上昇し、それにより発達した対流雲がひたすら雨を降らせる状況にあったことが窺えます。

 大規模な土石流が発生したのは、この 1 時間 40 分ほど後のことだったそうです。

 

終わりに

 地形の影響を受けない気象、というものは無いのかもしれませんが、今回の伊豆半島の気象は、風向場と地形的特徴により大筋は理解できるようです。

 また、数日間で例年の 7 月一か月分をはるかに超える雨が降ったことが分かっています。数日間湿った大気が運ばれるだけで、一か月分を超える雨を降らせるだけの水分が供給されるのかどうか、定量的な側面、検証は分かりませんが、ごあいさつでも書かせて頂いたように、ひとたび災害が起こった時の最大値、極値が、近年経験や予想以上に大きくなっている気がします。

 

 現在進行形の災害を机上で review するのは大変心苦しいのですが…、これが現実、自分たちが住む地の特徴に向き合う契機とさせて頂こうと思います。

 本日も最後までお付き合いありがとうございました。

気象予報をもう一度見直す - 2021.06.29 -

梅雨の雨

 東日本の梅雨の雨は「しとしと」と降り、西日本の雨は「時々ザーザー」降る、という話を子供の頃よく耳にした記憶があります。もっとも、その頃は、どこで日本を東と西に分けるのかも、あるいは、どの程度の雨を「しとしと」あるいは「ザーザー」にするのかを気にしたことはありませんでした。「しとしと」と降る梅雨の雨以外を目にしたことがほとんどなかったからです。

 こうした梅雨の雨の降り方の違いは、梅雨前線の成因、つまり前線を形成する気団の違いによるものだということを、仕事で天気を眺めるようになってから知ったものです。つまり、東日本の梅雨前線は、寒冷で湿ったオホーツク高気圧と、暖かく湿った太平洋高気圧の境目に位置し、西日本の梅雨前線は、暖かく乾燥した長江気団と、太平洋高気圧の境目に形成されるという違いです。

 

線状降水帯

 今日は全国で初めて、沖縄に線状降水帯発生情報が発表されました。今年から「顕著な大雨に関する情報」が運用されたばかりだというのに、です。必要だからこそ設定するものの、災害に関する情報に早速活躍の場が現れるというのは、あまり嬉しい話ではありません。

www.jma.go.jp

 線状降水帯という言葉は、この情報の中で使われるものですが、去年の 7 月、九州で線状降水帯の降水により、ひどい災害が引き起こされたことは記憶に新しいところです。

 気象庁の定義としては、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域」です。ニュースなどで解析雨量の推移の早送りを見てみると、確かに強雨域が線上で、ほとんど動いていないことが分かります。

 

地上天気図的には

 東京では夜中から今朝未明にかけ、窓を打つ雨音に何となく目が覚める位、激しい雨が降っていました。もっとも、関東南部、梅雨前線上を低気圧が通過していたためで、梅雨の雨というよりは、低気圧による嵐、といった感じでした。

 一方、線状降水帯の発生が報じられた沖縄では、沖縄本島の北、北緯 28、9 度付近に梅雨前線が位置していました。梅雨前線のすぐ南に位置していたわけですが、どんな風の場だったのか、いつもの通り、解析と予報を見てみることとしました。

 

気象庁 MSM 予報によると

f:id:ohigehige:20210629223441p:plain

 上図は、2021 年 6 月 29 日 03L と 06L の、沖縄本島を中心とした、地上 300m(だいたい雲底の高さ)、および地上 1500m の風の様子です。

 沖縄本島の南東部では南西の風が卓越する一方、西側では西風場となっています。沖縄本島西南西域ではほぼ無風域が形成され、その分、ちょうどこの 2 方向の風が沖縄本島付近で収束し、対流雲ができたであろうことが分かります(下 2 図)。また、本島北部には、梅雨前線に対応する風速の弱い部分があり、その北側では、確かに北東~東北東風場となっています。

 風が変化する場が那覇空港周辺を通過したのは、朝 4:30 ~ 5:00 位のようですが、その時の METAR は以下の通りで、ひどいものでした。

282000Z  33012G25KT 290V010 1000 R18L/0800V1400U R18R/0750V1200N +TSRA FEW003 SCT009 BKN015 SCT025CB 24/23 Q1005
281949Z  29013G24KT 260V330 4000 R18L/1200VP2000D R18R/0900VP2000D +TSRA FEW004 BKN012 FEW025CB 25/24 Q1006 RMK 1ST004 6CU012 2CB025 A2971 FBL TS 5KM N MOV E P/RR
281930Z  19013KT 4000 +TSRA FEW008 FEW020CB BKN025 BKN050 27/26 Q1004 RMK 1ST008 1CB020 5CU025 5SC050 A2966 FBL TS 15KM N MOV E

 

終わりに

 例年であれば、沖縄はすでに梅雨明け、そろそろ奄美も明けるかな、という頃ですが、今日の梅雨前線の位置を見る限りでは、もう少し後になりそうですね。今回も、「時々ザーザー」と降る典型例なのかもしれませんが、実害が極力ないことを願うばかりです。

 

 本日も最後までお付き合いありがとうございました。

 

気象予報をもう一度見直す - 2021.06.22 -

昨日は夏至でしたね

 昨日は夏至でした。一年で一番日の長い日ということですが、日の長さを実感した記憶は正直あまりありません。それもそのはず、日本は多くの地域でこの時期は梅雨の真っ只中です。『日常の気象辞典』(*1) によれば、夏至の頃の東京の晴天率は 21% ということです。

 

二十四節気

 二十四節気は、一年を、太陽の見かけの通り道(黄道)上の位置によって 24 等分する(定気法)季節の呼び方で、夏至はその一つです。つまり、これは気象をもとにした区分ではなく、太陽という天体の動きをもとに、地表の一地域で起こる季節的特徴、気象を抽出した分類と言えます。

 地表の一地域と書きましたが、二十四節気はもともとは、中国の黄河下流域、中原地方の気候をもとに名付けられているそうです。これらの名前が付けられた当時の気候を窺い知ることはもはや難しいですが、中原に当たる現在の地域の緯度は、日本の本州から九州と概ね同じであることもあり、季節変化が似ていたのでしょうか。時を超えて伝わる区分と言えども、現在の私たちにとっても、かなりしっくりくる季節の数え方なのだと思います。

 また、24 という数の区分が、日常生活にとっては、実に絶妙な長さであると思います。一か月を通じてあまり天気が変化したと感じないひと月もある一方、季節の移ろいを感じるひと月もあることを考えれば、2週間位を一区切りとする呼び名をつけることは、大まか過ぎず、それでいて確実に季節の移ろいを感じさせてくれるのに実にちょうど良く、絶妙としか言いようがありません。万一、一週間ごとに季節の名前がついていたら、多すぎて逆に鬱陶しいかもしれません。

 いずれにせよ、生活の中で『暦の上では』という言葉と共に語られる二十四節気は、自然の本質を捉えた季節の分け方であると同時に、私たちの生活にとてもしっくりくるからこそ、時を超えて伝わり、今も使われているのでしょう。ユネスコ無形文化遺産に登録されているのも納得です。

ich.unesco.org

 

この日、地上天気図的には

 今日は、雨こそ降らないものの、低く厚めの雲が広がり、時に雲の切れ間から日が差す、湿度が高めの、むっしりとした暑めの一日でした。雨が降らない場合の、典型的な梅雨の一日のように思えました。

 もっとも、梅雨前線は台北辺りから沖縄本島南、そして東経 140 度付近では北緯 32 度辺りにあり、本州からは離れた位置にありました。日本付近は顕著な気圧傾度の見られない場となっていましたが、日本海には 1006 hPa の低気圧が東進していました。もしかして、上空は寒冷渦となっているのかとふと思い、いつものように予報を見てみました。

 

気象庁 MSM 予報によると

f:id:ohigehige:20210622213757p:plain

 上図は、2021 年 6 月 22 日 12L における上空の 4 つの気圧面 (300、500、700、850 hP) における、等圧面と風の状況です。

 地上天気図にあった日本海上の低気圧は、上空の寒冷渦に対応したものではありませんでした。もっとも、低気圧の北側に位置する、南東進する高気圧は、300、500、700 hPa の気圧面ではっきり見て取れます。

 また、700、850 hPa 等圧面では、梅雨前線近傍に、風速 50 kts を超える、下層ジェットと思われる強風軸も予報されているように見えます。

 

終わりに

 関東地方では、特記すべき状況にはなっていなかったものの、この時期に見かける現象が所々に顔を出している、と感じたのは私だけでしょうか。

 

 本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。

(*1) 『日常の気象辞典』平塚和夫編 東京堂出版

気象予報をもう一度見直す - 2021.06.11 -

はじめに…

 関東はなかなか梅雨入りにはならないようですが、すでにここ何日間か、連日真夏日となっています。何でも慣れていないと余計な労力を使いますが、暑さに関しても、この事は完全に当てはまりそうです。暑さに慣れていないこの時期の暑さは、個人的には真夏以上に体にこたえる気がします。暑いのは嫌いではないのですが、紫陽花よりも私が先にしおれてしまいそうです。しっとり地面を打つ雨が待ち遠しいこの頃です。

 

この日、地上天気図的には

 三陸沖、東経 152 度付近に中心を持つ1024 hPa の高気圧がゆっくり東進しており、その高気圧の後縁に位置するように、九州北、北緯 30 度付近に中心を持つ 1006 hPa の低気圧も北東進していました。数日内には関東でも天気が下り坂へと向かいそうな気圧配置となっていました。

 もっともこの日、関東では前日までのような夏空ではなかったものの、暑さの続く晴れ、あるいは高曇りと言える日でした。確かに高気圧は徐々に遠ざかり、その後面に位置してはいたものの、高気圧域は、近畿から四国地方位までは及んでいるようでした。

 

実際には

 とはいえ、西日本では高気圧の影響がすでに弱くなっていたようで、大阪以西では上空には雲が広がり、九州では雨の所も少なくなかったようです。この雲域に呼応するように、西日本上空では弱い北風が見られるという報告もありました。

 真夏でないので、上空にチベット高気圧の影響がすでに出ている、というわけではないにせよ、高気圧の進行方向後面は異なる性質の大気の境界となっているせいで、飛ぶにはあまりパッとしない状況であることが少なくありません。こんな時にはいつも、安定した高気圧は、水平そして鉛直方向でどの程度に及ぶのかについて考えさせられます。

 

気象庁 MSM 予報によると

f:id:ohigehige:20210612120204p:plain

 上図は 2021 年 6 月 11 日 15L の上空の 4 つの気圧面 (300、400、500、850 hP) における、等圧面と風の状況です。

 関東から四国地方では、大気中層 (500 hPa) までは、高気圧性回転の風が見て取れますが、上層 (400、300 hPa)では、関東南部では、むしろ太平洋から吹く東風が見て取れます。多分この高度付近以下で、三陸沖の高気圧は上限を迎え、上端から風が吹き出していたものと思われます。実際、31000 ft から 28000 ft 辺りには薄い雲が広がっていましたが、雲の下では夏空という感じでした。

 また 400 hPa では、高気圧の後面を流れる南西風場と、高気圧から吹き出す東風場が、紀伊半島東、伊勢湾南沖でぶつかり、風の変わり目が見て取れます ( 実際 5 分ほどガタガタ揺れていました )。

 

終わりに

 以前、秋の移動性高気圧の勢力域について見た時には、大体 20000 ft 付近が上限でしたが、今回は、27000 ~ 28000 ft 位が上限だったようです。高気圧の位置、強さ、その時の大気層厚によって色々変わるのでしょうが、日本付近の中緯度帯は、やはり気象の宝庫ですね。

 

 最後までお付き合いどうもありがとうございました。

気象予報をもう一度見直す - 2021.06.04 -

ジメジメした時期になりました

 今日東京では、雨というよりは、風と湿度のひどい一日でした。近所の人とも、「だんだんジメジメした嫌な時期になってきますね~」、という言葉が、どちらからともなく口をついて出ます。

 

地上天気図的には

 風の原因は、前線を伴った二つの低気圧が関東南部、北海道西に位置し、その通過に伴い、低気圧の南東象限で気圧傾度の大きい状況となったためでした。冬でないので、低気圧がを二つ玉低気圧、と呼ぶことはないのでしょうけれど、前線付近では、荒れた天気しか想像できない状況でした。

 今日は久しぶりに羽田界隈にいたのですが、傘を開こうという気が全く起きないほどの強い風が、東京湾沖から断続的に吹いていました。南から南西の風は、地形の影響も相まって、関東平野の南を吹き抜けます。数値予報の風を見てみよう、と久しぶりに思った瞬間でした。

 

気象庁 MSM 予報によると

 850 hPa (地上 1,500m 付近) は、一般的には地表の摩擦の影響がなくなる高度、と言われます。もっとも、関東平野を取り巻く山々は、それ以上の高さがあるので、この等圧面は、とりわけ関東地方に関しては、山の地形による影響と、気圧配置による風が合わさって現れる、とても興味深い高度だと思います (単なる私見ですね…)。

f:id:ohigehige:20210604223857p:plain

 上の図は 2021.06.04 15L の850 hPa における風と等圧面高度 (左) と相対湿度 (右) を図示したものです。本州の中央に位置する山脈を避けるように、寒冷前線進行方向前方、温暖前線の暖気側を吹く南西~南寄りの風が面白いように予報されています。モデルに使われている地形データの再現性には、ただただ脱帽です。

 また、北海道西の低気圧周辺では、東京界隈の低気圧とはちょっと違う風が予報されています。

 

 数日後には、台風 3 号が梅雨前線上を移動する低気圧に変わるような予報をラジオで耳にしました。今年は、長雨による悪影響が無いことを祈るばかりですね。

 

 本日も最後までお付き合いありがとうございました。

 

休み明け、梅雨間近に…

 最後に記事を書いてから、4ヶ月弱が過ぎていました。今年ももう 6 月、関東では梅雨入りの発表はまだされていませんが、例年と同じ頃に梅雨入りとすれば、向こう 1 週間位の間に発表されることとなるでしょう。もっとも、明後日位からは雨模様の予報みたいです。

 梅雨前線の北側に位置しているにも関わらず、日中はなかなか暑くなることが多くなってきました。これで梅雨前線の南側に位置することとなったら、暑さと湿度はどうなってしまうのでしょう。梅雨に入る前から、夏が思いやられます。

続きを読む

日照時間で感じる季節の移り変わり - 2 -  2020 年の軽い EDA

 前回は、国立天文台の「日の出入り」データを Beautiful Soup でお借りし、それを numpy / pandas 形式で整えるところまでやりました。

 必要な日の出入りのデータをお借りすることはできるようになりましたが、そのたびにアクセスするのも先方に迷惑なので(?)、一年分まとめてお借りし、それを自分の computer に保存、その後いじくることとしました。

 

目次

1.2020 年一年分の日の出入りのデータをまとめて保存する

2.データの整形

3.簡単に見てみる

4.簡単に図示する

まとめ

 

1.2020 年一年分の日の出入りのデータをお借りし、保存する

 データをまとめ、保存する方針と形式(と言うほどのものではないのですが)は、次のようにしました。

① 2020 年を一つのフォルダへまとめる。

② サイトのページをそのまま保存するイメージ。つまり、ファイル数は月数。

③ 保存ファイル形式は、 csv 形式。

 前回は 1 ページ(つまり 1 か月分)のみ読み込むだけだったのですが、一年分まとめて読み込み、それを保存する、という形にしました。

import urllib.request
from bs4 import BeautifulSoup
import numpy as np
import pandas as pd
import os

yr = "2020"
mnths = ["01","02","03","04","05","06","07","08","09","10","11","12"]
dys = [31,29,31,30,31,30,31,31,30,31,30,31]  # 2020 only

def gather_srss(i):
mnth = mnths[i]
dy = dys[i]
target_url=
"https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/"+yr+"/s13"+mnth+".html"

with urllib.request.urlopen(target_url) as hinodeiri:
html = hinodeiri.read()
soup = BeautifulSoup(html, "html.parser")
srsss = soup.find_all('td')

A = []
for srss in srsss:
a=srss.contents[0]
A.append(a)

B = np.array(A).reshape(dy,7)
for m in range(dy):
B[m,1] = B[m,1].replace(' ', '0')

s = pd.DataFrame(B)
s.columns=['Date', 'SR_time', 'SR_dir', 'Culmination',
'Culm_alt', 'SS_time', 'SS_dir']

os.chdir(r'C:\ 保存するフォルダ名 ')
s.to_csv(" ファイル名 "+yr+mnth+".csv")

for i in range(12):
gather_srss(i)

  

2.データの整形

 これで相手のサーバーに迷惑をかけることがなくなりました。

 保存したファイルを読み込み、一年分まとめてデータフレーム(df20)にします。そして、列ごとにデータの型式を揃え、ついでに、日照時間(Daylight_Hours)、太陽の移動角度(Travel_Angle)を付け加えました。

import os
import pandas as pd


os.chdir(r'C:\ 保存したフォルダ ')
yr = "2020"
mnths = ["01","02","03","04","05","06","07","08","09","10","11","12"]
df20 = pd.DataFrame()

def read_srss(k):
del df['Unnamed: 0']
df['Date'] = df['Date'].replace({' 1':'01', ' 2':'02',' 3':'03',
' 4':'04',' 5':'05', ' 6':'06',' 7':'07',
' 8':'08',' 9':'09'})
df['SR_time'] = yr+"/"+mnths[k]+"/"+df['Date']+" "+df['SR_time']
df['SS_time'] = yr+"/"+mnths[k]+"/"+df['Date']+" "+df['SS_time']
df['Culmination'] = yr+"/"+mnths[k]+"/"+df['Date']+
" "+df['Culmination']

for k in range(12):
df = pd.read_csv("SRSS"+yr+mnths[k]+".csv", dtype={'Date':str})
read_srss(k)
df20 = df20.append(df)

df20['SR_time'] = pd.to_datetime(df20['SR_time'])
df20['SS_time'] = pd.to_datetime(df20['SS_time'])
df20['Culmination'] = pd.to_datetime(df20['Culmination'])

df20['Daylight_Hours'] = df20['SS_time'] - df20['SR_time']
df20['Travel_Angle'] = df20['SS_dir'].astype('float64') - df20['SR_dir'].astype('float64')

df20.head()
  Date SR_time SR_dir Culmination Culm_alt SS_time SS_dir Daylight_Hours Travel_Angle
0 01 2020-01-01 06:50:00 118.1 2020-01-01 11:44:00 31.3 2020-01-01 16:38:00 241.9 0 days 09:48:00 123.8
1 02 2020-01-02 06:51:00 118.0 2020-01-02 11:45:00 31.4 2020-01-02 16:39:00 242.0 0 days 09:48:00 124.0
2 03 2020-01-03 06:51:00 117.9 2020-01-03 11:45:00 31.5 2020-01-03 16:40:00 242.1 0 days 09:49:00 124.2
3 04 2020-01-04 06:51:00 117.8 2020-01-04 11:46:00 31.6 2020-01-04 16:40:00 242.3 0 days 09:49:00 124.5
4 05 2020-01-05 06:51:00 117.7 2020-01-05 11:46:00 31.7 2020-01-05 16:41:00 242.4 0 days 09:50:00 124.7

 データフレーム自体は、前回から目新しさはありませんが、データ型は以下のようにしました。

df20.dtypes

Date                     object
SR_time                datetime64[ns]
SR_dir                   float64
Culmination         datetime64[ns]
Culm_alt               float64
SS_time                datetime64[ns]
SS_dir                   float64
Daylight_Hours    timedelta64[ns]
Travel_Angle        float64
dtype: object

 

3.簡単に見てみる

  jupyter notebook のセルでは、それほど長いと感じなかったのですが、ブログにコピペすると、なかなか長いですね。ということで、さっそく 2020 年の日の出入りのデータをざっくり見てみることとします。

df20.describe()
  SR_dir Culm_alt SS_dir Daylight_Hours Travel_Angle
count 366.000000 366.000000 366.000000 366 366.000000
mean 88.934699 54.686612 271.067486 0 days 12:10:55.573770491 182.132787
std 20.536070 16.482305 20.537343 0 days 01:40:01.575416347 41.073001
min 60.000000 30.900000 241.400000 0 days 09:45:00 122.800000
25% 68.725000 38.375000 250.850000 0 days 10:33:30 141.575000
50% 88.600000 55.000000 271.450000 0 days 12:12:30 182.850000
75% 109.150000 70.975000 291.325000 0 days 13:47:45 222.550000
max 118.600000 77.800000 300.000000 0 days 14:35:00

240.000000

 

 

 簡単に見るだけのつもりが、これだけでほぼすべてが語られていました。

 東京の緯度は、北緯 35°41' であることを念頭に見てみると。

① 2020 年は 366 日で、

② 一年平均すると、太陽はほぼ真東 (北から 88.9° の位置) から昇り、真西 (271°) に沈み(要するに、春分秋分の日辺り)、

春分秋分時の南中高度 (Culm_alt) は 54.6°(90° ー 東京の北緯 35°41')で、

④ 日中の時間は 12 時間 10 分。

⑤ 南中高度が最大になるのは(おそらく夏至の時で)、77.8° (90°ー(東京の北緯ー北回帰線 23.4°))

⑥ 南中高度が最小になるのは(おそらく冬至の時で)、30.9° (90°ー(東京の北緯+北回帰線 23.4°))

 まさに教科書通りというか、あるいは、教科書が過不足なく言い表しているというべきでしょうか。

 

4.簡単に図示する

describe() だけでも十分のような気もしますが、とどめにいくつか図示してみました。

f:id:ohigehige:20210206230844p:plain

 左から、一年を通じた南中高度の変化、日照時間と年中高度の関係、日照時間と太陽の移動角度の関係を図示しました。ここまできれいに精度よく記述できるからこそ、今年の節分のように、補正も精確にできるのでしょうね。

 

まとめ

 日の出入りに関しては、怖ろしい精度で記述が可能であることが窺えました。また、データを整えさえすれば、あっという間にまとめてくれる、python やそのライブラリにもびっくりです。

 日照時間の変化は、十分過ぎる位感じることができましたが、これに天気などのデータを加えると、季節の移り変わりを感じることとなるのでしょうか…。おいおい試してみたいと思います。

 

 今日は、寒さが緩んだというよりも、暖かい一日でした。2 月の第一週目で最高気温が 16 ℃位になるのは驚きです。

 本日も最後までお付き合い、ありがとうございました。