未だ冬の嵐 - 2022.02.21 ~ 22 - 北海道の驚異の気圧傾度
降雪量より積雪量
昨日 2/21、そして今日 2/22、札幌を発着する電車は全便運休したようですね。特に昨日は、札幌市内でも、吹雪で前が見えない時が何度もあったそうです。
(関連記事)『札幌で列車が終日運休!? - 2022.02.06 -』
すでに何度も書いていますが、今季の札幌は、本当に雪の当たり年のようです。もっとも、住んでいる人に言わせると、降雪量はこんなものかもしれないけれど、今年は積雪量がすごいとのこと、なるほど、雪の影響と言っても色々な側面があることを教えられました。
北海道の驚異の気圧傾度
昨日と今日の地上天気図を見ても、東北地方南部以南の等圧線の横切り方は、冬型に気圧配置の時には、まあこんなもんか、という感じですが、北海道に関しては、渡島半島から北方四島まで含めると、実に 40hPa (!)程の気圧傾度となっています。つまり、等圧線 10 本が横切っているということです。台風の時でも、これほど等圧線が混みあうことは多くはないのではないように思います。
また、北西から南東方向に等圧線が走っているので、これでは札幌のみならず、千歳にも雪がどんどん流れ込みます。実際、観測史上初の積雪量 100 センチ越となりました。
一目瞭然のなす術の無さ
新千歳空港の昨日から今日にかけての天気の推移を見てみました。
METAR RJCC
210600Z 31028KT 0600 R01L/1300VP2000D R01R/0900VP2000D SHSN BLSN VV005 M02/M03 Q0998=
210900Z 32015KT 1000 R01L/P2000N R01R/P2000N -SHSN FEW005 BKN015 BKN020 M03/M03 Q1001=
211200Z 28010KT 9999 -SHSN FEW010 BKN/// M04/M07 Q1002=
211500Z 30013KT 0500 R01L/1800U R01R/1800U SHSN VV004 M04/M04 Q1003=
212200Z 32011KT 0300 R01L/0450N R01R/0500N SHSN VV003 M04/M04 Q1005=
220300Z 33010KT 0600 R01L/0800V1100N R01R/1000V1200N SHSN VV005 M03/M04 Q1005=
220900Z 32017KT 0600 R01L/2000N R01R/2000N SHSN VV005 M04/M04 Q1008=
221300Z 32007KT 4500 -SHSN FEW003 SCT010 BKN030 M05/M06 Q1010=
なす術の無い状況が続いていますね…。それでも、ようやく 2/22 午後 10 時を過ぎて少しは運航出来そうな数値になってきました。気圧も上がってきました。
一時的な落ち込みは時には経験するとしても、これほど運航できない状況が長時間続くのは、正直記憶にありません。
札幌の高層大気の確認
過去の記事『千歳の雪』で書きましたが、新千歳空港の降雪特性として、
<知見②> 降雪量最多は、850 hPa の風向が 310 ~ 340°、風速 30 kts 以上の場合。
というのがありました。確認のため、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして、札幌の高層気象観測値を確認してみました。
850 hPa の風は、北西の風 50 kts。まさに降雪量最多となるパターン通りですね。
明日の午後位からは、札幌発着の快速、特急も再開の予定のようです。国公立大の入試も控えていますし、天気もちょっと落ち着きを取り戻して欲しいものですね。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。
南岸低気圧 3 例 - 2022.02.19 を中心に -
今年は関東でもよく雪予報を耳にしますね
2/19 から 2/20 にかけて、今年何度目かの南岸低気圧が関東地方南部を通過しました。今年は例年になく関東では、雪の予報警報が多く(と言っても数度ですが)出されていますが、今回に関しては、雪に関する注意といった話は何も耳にしませんでした。
事実、雨足はそれなりに強かったものの、2/19 は午後 10 時過ぎでも気温が 6、7 ℃ありました。上空には冬の象徴とも言えそうな風速 150~200 kts を超えるジェット気流が未だ吹いていますが、地上では寒さは残るものの、その緩みを感じさせる、乾いた空気を潤す春の雨の様相でした。冬の終わりを確かに思わせる一時です。
南岸低気圧は、関東に雪をもたらすのか、あるいは雨となるのか予報が難しいという話をよく耳にします。低気圧の通過経路、上空の寒気、そして地表付近の滞留寒気の状況等によるためとの事です。ということで、今シーズンの南岸低気圧通過時の大気の鉛直方向の状況を見比べてみることとしました。
南岸低気圧 3 例
上図は、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして図示した、2022 年 1 月 6 日午前 9 時(左)、2 月 13 日午後 9 時(中央)および 2 月 19 日午後 9 時(右)における館野の大気鉛直方向の気温および風の分布です。
(1/6 については、過去の記事『雪が積もれば大騒ぎ - 2022.01.06 - 都心に雪を降らせる南岸低気圧』でも扱っておりますので、ご興味のある方はどうぞ。)
各日の地上天気図は気象庁の過去の天気図をご覧頂くとして…、
高層気象の観測値を見ると、雪か雨かの違いは、上空の寒気の状況ももちろんあるのでしょうが、一義的には、地表付近の気温で決定されることが分かります(雪あるいはみぞれとなった左 2 例は地上付近の気温が 0 ℃、右 19 日は 5 ℃ほどです)。上空3,000m(700 hPa)、5,500m(500 hPa)の気温を見ても、有意な差は見受けられません。
湿った重い雪、あるいはふわっとした軽めの雪かについては、気温と露点温度の差、湿数で決まるのかもしれませんが、上の 3 例では何とも言えませんね。みぞれ、雨だった右 2 例では気温と露点温度がほぼ同じだったことは分かります。次の機会で調べてみたいと思います。
雨水(うすい)
2/19 はまた、二十四節気の雨水でした。「あまみず」と読んでしまうと風情が無く、全く残念ですが、「うすい」と読むと俄然季節の節目感が出てきます。立春から半月余り、降る雪が雨に変わり、氷が解けて水となる。それを直感的に感じられる季節名です。
とはいえ、二十四節気の元となっている中国中原の気候が当てはまるのは、日本では東北地方南部から九州に限られるかもしれないと、特にこうした季節の変わり目には改めて感じます。
低気圧の通過に伴い、昨日 2/20 はまた冬型の気圧配置が強まり、風が冷たく感じられた日になりましたね。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。
冬の名残と春の兆し - 2022.02.15 -
春一番の便りが届きましたね
新潟、富山、金沢、そして福井では午前 8 時から 10 時の間に春一番が観測されたそうなので、参考までに、その時間帯における小松空港(RJNK)における空港気象通報を見てみました。
RJNK 150100Z 20017KT 9999 -SHRA FEW015 SCT030 BKN060 09/02 Q1012
150000Z 19014KT 9999 FEW015 SCT030 BKN060 08/01 Q1012=
142300Z 21012KT 180V240 9999 -SHRA FEW008 SCT030 BKN060 08/M01 Q1012=
金沢の気象台の観測値(南西の風 11.6 m/s)よりは弱いみたいですね。むしろ、午後 9 時の通報値の方が、それらしい風速です。
RJNK 151200Z 26020G30KT 230V300 8000 -SHRA FEW010 BKN030 BKN050 05/01 Q1011=
日本海の低気圧が半日の間に東進して、気圧傾度がやや大きくなったのでしょうか…。でも、この気温なら雪の心配はなさそうですね。
春の雪
ついおととい、東京では南岸低気圧の影響で少しみぞれが降ったばかりですが、今週末にもまた南岸低気圧の通過により、天気が崩れる予報が出ています。
東京は笑ってしまう位雪には弱く、雪への対処に全く慣れていないのは事実なので、注意を喚起するのは確かに必要です。もっとも、一昨日の雪予報は、予報通り雪が降ったことよりも、雪になる前の日中の雨脚の強さにむしろ驚かされました。特に雪になる 1、2 時間前は、成田空港では小雨どころかかなり本降りと言ってもいい程の降り方でした。この雨脚のまま雪になったら凄そうだと、同僚とは話していました。低気圧に伴う温暖前線が活発だったことが窺えます。
以前『8 月、雨は多かったのか ~ 30 年間の降水量平均からの偏差 ~』で、気象庁が年降水量の偏差の推移を紹介していることを書きました。昨年 2021 年は予想通り、多雨の年でした。
夏にゲリラ豪雨という言葉を使うのはすっかり定着した感がありますが、先日のように、札幌ですら交通が麻痺するような降雪にも、今後もしかしたら何かキャッチーな名前がつくかもしれませんね。もちろん、そんな災害級の降雪は無いに越したことはありません。
風光る、風薫る、風白し、風冴ゆる。それぞれ、春、夏、秋、そして冬に使われる言葉です。
個人的には、季節を表す比喩表現だと思っていたのですが、実は季語なのだそうです。もっとも、江戸時代に使われ始め、明治以降好んで使われているそうです。
なるほど、確かに『**和歌集』に選ばれている歌では記憶にないはずです。
寒さに冬は感じても、陽射しはもう春
2 月も半ばになると、陽射しが力強さを増し,、冬をあまり感じなくなるためか、気持ちはますます次の季節へと前のめりになるように思います。東京でも、3月末位まではみぞれが降ることは稀にあるので、本当は気は抜けません…。
冬から春への移り変わりが長く感じるのは、こんな風に気持ちが先走るせいなのかもしれませんね。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。
札幌で列車が終日運休!? - 2022.02.06 -
札幌で列車が終日運休!耳を疑いました…
今年は千歳の雪がなかなかスゴイと先日書きましたが、北海道や日本海側では、やはり今シーズンは雪の降り方が例年以上に激しいみたいですね。昨日の大雪で、今日は、札幌駅を発着する列車が終日運休というニュースには、正直耳を疑いました。雪に慣れている地方でもこのようになってしまうんですね。夏は豪雨、冬は大雪。気象現象の強度がだんだん大きくなっている気がするのは、やはり気のせいではないのでしょうか。
確かに 2/6 は西高東低の典型的な冬型の気圧配置でした
寒気の流れ込みがよほど強かったのか、昨日、一昨日とも、東京では昼前後を中心に数時間ほど、低めの縮れたような寒気が流れ込んだと思われる雲に覆われました。その時間帯の前後はきれいな冬場れの青空だったにもかかわらず、です。
地上天気図は教科書通り、西高東低の冬型の気圧配置、そして上空のジェット気流はちょうど館野と八丈島上空を流れる予報が出ていたので、ラジオゾンデの実測値を見ることとしました。
上図は、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして図示した、2022 年 2 月 6 日午前 9 時における館野(左)および八丈島(右)の大気鉛直方向の気温および風の分布です。同時刻の国内悪天予想図(FBJP)には、館野上空高度 25,000 ft(7,500 m)、そして八丈島上空高度 36,000 ft(11,000 m)にそれぞれ 160 kts、190 kts のジェット気流が予報されていました。
館野でも八丈島でも、ほぼ予報通りの高度で極大風速となっています。圏界面は極大風速面のやや上の高度に位置しているので、ジェット気流の構造が教科書通りであると仮定すれば、ジェット気流の中心軸は、館野、八丈島共に、観測地点やや北側に位置していたと言えます。
ジェットのさらに上へ
先日 HAPS とするグライダーの大きさや重量を見て以来、グライダーが飛ぶ高度帯の大気の状態について、自分の中でイメージを膨らませたいと思っていました。また、地上から成層圏に飛んでいくとしたら(あるいは、他の手段である程度の高度まで持ち上げるのかもしれませんが)、冬場だとジェット気流による揺れは問題ないのだろうか、等と要らぬ疑問を抱いていました。
当然、強度のある新素材を使っているのでしょうし、また、そもそも乱気流に巻き込まれると分かっている地点や時期は外すと思うので、全く知らない者の好奇心に過ぎないのですが…、冬場には、気球による高層大気観測で対流圏上部と成層圏下部を明瞭に対比できることが多いので、この冬に色々調べてみることとします。
鉛直分布表示をちょっと変更しました(HAPS 仕様?)
変更したのは以下の点です。
① 気圧面ではなく、高度表示で鉛直分布を表示することにしました。
大気に忠実という点では気圧面を基準にした方が良いのでしょうが、これまでほとんど見てこなかった高度の大気気圧が頭に入っていないので(泣)、高度(ジオポテンシャル)表示にして、直感的に分かりやすくしました。
② 風速の鉛直分布を矢羽根に加えて表示し、変化のイメージが湧くようにしました。
③ 参考とする気圧面を色を変えて表示しました。
・天気などでよく使われる気圧面(500、700、850 hPa。それぞれ地上 5500、3000、1500 m) … 銀色(下から 3 つ)
・ジェット機がよく飛行する高度(300、200 hPa。それぞれ地上 8,800、11,600 m) … 赤色
・HAPS が使う高度(70、50 hPa。それぞれ地上 18.3、20.3 km)… 橙色
・オゾン層の高度(30、15 hPa。26 ~ 28 km)… 薄空色
こうしてみると、地上 18 km 程度ではまだそれなりの、50 kts を超える風が吹いていますが、20 km を超えると数十 kts となるので、グライダーの飛行速度を考えると、地上に対する位置の修正もやり易そうなことが窺えます。
揚力を使う飛行機の舞台としては、成層圏は正にこれから商用が進むのでしょうけれども、大気科学の分野では、オゾン等の問題から、すでに非常に多くの知見があることを初めて知りました。色々なフィールドが広がっていて、迷子になりそうな気配ありありですね。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。
何を解とするのか ~ 近未来のデザイン ~
ついに節分ですね
風の冷たい時はありますが、東京では日差しに暖かさが増しているのを確かに感じます。ダウンジャケットを着たまま体を動かすと、もう少し薄いものでも良いかも、と思うこともある位です。
ISS の引退 ~ LEO における世代交代? ~
まだ 8 年ほど先ですが、国際宇宙ステーションの利用を 2030 年で終了し、31 年 1 月に太平洋に落下させるそうです。
30 年間利用するとすれば、技術自体何世代も新しくなるでしょうし、維持管理にもそれなりのコストがかかるとすれば、寿命とするのは妥当な判断なんでしょうね。あるいは普通の家と同じで、もしかしたら老朽化も見過ごせなくなるのでしょうか…。
地上 2,000 km 以下の地球を回る衛星軌道を LEO(Low Earth Orbit)と呼びますが、ISS は地上約 408 Km、大気区分で言えば熱圏を周回していることになります。ですが、近年はいくつもの民間企業がすごい数の通信衛星などを LEO に打ち上げているので、上の記事にもあるように、国家がコストをかけて ISS のようなものを主導する積極的な理由が見つけにくくなったのかもしれません。
HAPS ~ 次は成層圏です ~
Softbank の出資する HAPS Mobile や Airbus と NTT Docomo が共同で取り組んでいる HAPS(High Altitude Platform Station)通信のどこが気になるかと言えば、以前『成層圏を舞うグライダー』でも書きましたが、その Platform に使われているグライダーの形状です。
成層圏に到達するという点では、気球や飛行船といった形態が既にあります。ですが、太陽光発電による電力をその動力源とし、地上から制御して platform が無人であるという点、空気密度の薄い空間を揚力を使って飛ぶ Glider は、確かにそうなるだろうなというものではありますが、やはり未来的であり、ある意味アニメ的な形状です。
もっとも、成層圏にグライダーを飛ばして通信局とするといっても、地上からの中継局(repeater)にするのか、あるいは基地局(base station)にするのかで HAPS に必要とされる要件も変わるようで、ニーズやコストに合わせて決まって行くようです。
試みに、HAPS Mobile の使用した HAWK30 と、Airbus の Zephry S の大きさは以下のようでした。
HAWK30 全長約 78 m プロペラ 10 個 飛行速度約 110 km/h
Zephry S 翼幅 25 m 重量 75 kg 以下
求めている条件が異なるのでしょうけれど、結構違うものですね。ちなみに、ジェット機の Airbus 320ceo は以下の通りです。
A320 ceo 翼幅 34.1 (35.8) m 最大離陸重量 66 - 77 ton
利用される環境が違うので、実に愚かな比較ではありますが、全く別物ですね…。
何を解とするのか ~ 近未来をデザインする ~
現在は、これまで夢物語であった話を実現可能とする諸技術が、色々な分野で結実し利用可能となりつつある瞬間なのかもしれません。
何を解とするのか、目標とするのかについては、それを求める人間が試行錯誤するしかありませんが、その解の実現のためにイメージを描いてみることは、技術が確立しつつある現在、どんどん大切になって行くのだろうと思います。
新しい分野で一つの合理的解を求めた結果、人間自身が何年もかけてミスの無いように訓練を重ね、運用することは合理的でない、という判断をするようになる時代が、あるいは遠からず来るのかもしれません。
もちろん、人間が行うことにしかお金を払わないという人も一定数有り続けることは間違いないと思いますし、人間が行うから価値があるというものもあり続けるでしょう。それでも、数十年後に 2022 年を振り返った時、一つの分水嶺となった時期だった等と思うことになるのでしょうか。前回、気象の側面を捉えて『始まりなのか、それとも終わりなのか?』と題したところですが、現在のこの時代にも当てはまるのかもしれないと思ったところです。
それにしても、成層圏 Platform の話は本当に面白いものです。ということで、新しくカテゴリーを作って、推移を色々見て行くこととしました。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。
始まりなのか、それとも終わりなのか? - 2022.01.26 - 大寒の雑感
大寒真っ盛り、確かに寒い日が続いていますが、でも、冬の表情にも案外変化があるものです。
冬はいつでも西高東低というわけではない
寒いのであれば、日本周辺は、当然西高東低の冬型の気圧配置となる、飛行機の運航に結び付けて言えば、西に向かうと空港の地上気圧は上がり、東に向かうと地上気圧が下がることは、冬場は確かに多いのですが…、実際には東西日本の地上気圧に大きな差がないこともままあります。事実、今月 21日頃を最後に、この何日間かははっきりとした西高東低の気圧配置となっておらず、確かに、西に向かっても東に向かっても、空港の気圧はほとんど変化がありませんでした。
過去の天気図を眺めてみても、西高東低の気圧配置が続くこともありますが、そうした典型的な気圧配置になっている日は、意外とそう多くはないものです。
風が即、気温を決めるわけでもない
今日の昼の成田の気温は 8 ℃程、一方宮崎では 17 ℃にもなりました。17 ℃は、T シャツ一枚というわけにはいきませんが、正直快適です。これが沖縄の気温なら何も驚かないのですが、一年で一番寒い時期に九州でこれだけ暖かいと、束の間冬を忘れかけます。
この違いはどうやら太陽の恵み、つまり日射のようで、宮崎では、北西の風のやや強めに吹いていたものの良く晴れていました。一方成田では、風は弱いけれども低気圧の雲が抜けきらなかった、そうした違いに起因しそうです。
変化は足早に着実に
先日『今シーズンはジェット気流も強い』で書きましたが、今年は上空の強風軸の風速が大きい時には 200 kts を軽く超えます。もっとも、今日の昼頃は 150 kts 程度でした。しかし、夕方には 170 kts を超える風速が見受けられました。風速が短時間に増えていたので、これは西高東低の気圧配置がはっきりしてきて寒くなるのだろうか、と思っていたところ、案の定天気予報でも明日以降寒くなると言っていました。
暖かな気温で忘れていましたが、確かに地上気圧は、すでに宮崎が相対的に高く、成田は低くなっていました。
気圧配置は大気の流れを決め、それによって気温が変化しますが、そもそも季節的な気圧配置は、地面や海の内包する熱量によって決まります。
気温や気圧など、偏差を解消するべく様々な現象が起こりますが、短いものから長いものまで、様々な時間スケールを取ったとしても、そこには変化と定常が隣り合わせに垣間見られる気がします。あるいは、現象に向き合う側面によって、何かの始まり、あるいは終わりと呼ぶのでしょうか。
以前にも書いた気もしますが、季節や日々の天気の変化を、様々なことに当てはめることが出来るように感じるのも、日本のような、気象が周期的に移り変わる地域で生活しているからなのだろうと改めて感じます。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。
今シーズンはジェット気流も強い - 2022.01.18 -
ジェット気流の風速の「大台」
「大台に乗る」という言い回しは、色々な場面で耳にします。株価、年齢、あるいは体重など、節目や区切りとなる境目に達する場合に使われますが、もともとは、株式市場で使われる言葉なのだそうです。
この冬は、新千歳空港で雪の降り方がなかなか激しいことは先日書いたところですが(ご興味のある方は『千歳の雪』をどうぞ)、ジェット気流と呼ばれる強風軸の風も平年以上に強いことが多いと感じています。
どの程度の風速が強風軸の標準値なのかは、多分決まっていないと思いますが、目にしないわけではないけれども、そうしょっちゅう遭遇しない風速、つまりジェット気流の風速の大台は(あくまで私の基準ですが)、「200 kts」です。200 kts と言えば時速 370 km/h ほど。新幹線の時速以上の速さです。
この冬は、特に昨年末から現在まで、予報でも実際にも 200 kts を超える強いジェットが形成されていることがしばしばあります。飛行機の水平飛行中の巡航速度が 420 ~ 440 kts 程度であることを考えると、こうしたジェット気流を正面から受ける西行きの飛行では、地面に対する時速は半分近くになり、反対に追い風となる東行きでは、5 割増となります。冬には西行きは実に遠く、東行きはあっという間に戻ってこられるのはこのためです。
ラジオゾンデでも 200 kts 超えの風速は観測されたのでしょうか
昨日から今日にかけ、九州北部・中央部~紀伊半島南端~八丈島上空 34,000 ~ 35,000 ft に風速 210 kts の強風軸が予報されており、実際その程度の風が吹いていました。なかなかお目見えしない風速なので、高層気象データを見てみることとしました。
上図は、いつものように気象庁の高層気象データをお借りして図示した、2022 年 1 月 18 日午後 9 時における潮岬(左)および八丈島(右)の大気鉛直方向の気温および露点、そして風の分布です。
強風軸の高度を予報されていた 34,000 ft は 250 hPa 付近、潮岬では 195 kts となっていました。残念ながら、観測値としては 200 kts に届かなかったようです。
通常、ジェット気流に伴う揺れやすい領域は、強風軸の中心高度から 3 ないし 4000 ft 下に形成されます。上空の前線帯と呼ばれますが、これは、風速が強風軸高度を中心に急変する場所となるためです。
しかし、この日は、強風軸下の前線帯以上に、強風軸の中心高度から数千 ft 高い高度で風速の大きな変化域(wind shear 域)が結果として形成された状況となっていたため、強風軸より高い高度での揺れの方がむしろ気になりました。強風軸の風速がここまで大きくなると、むしろ風の急変域は、成層圏下部、圏界面付近となる強風軸上部なのかもしれない、と思った次第です。
強風軸の風速が例年以上に大きい理由を考えてみました
冬場にジェット気流と呼ばれる強風軸が顕著となるのは、南北の温度勾配が冬場に大きくなるためですが、その風速が例年以上に大きいことが今シーズン結構多い理由を、現時点でちょっと考えてみました。
肌感覚以上に確かめようがないのですが、今年の傾向として、以下の 2 点が挙げられるのかもしれません。
<理由①> 大陸からの寒気の張り出しが強い。 → 寒帯ジェットの場所が例年東北地方あたりのことが多めですが、茨城北部を通っていることもある。
<理由②> 南からの暖気域が張り出している。広い。 → 亜熱帯ジェットが種子島、屋久島~奄美諸島界隈を通ることが多い中で、九州上空を通っている。
<結論> この結果、南北の温度勾配が顕著となる領域が例年より南北方向に狭い。つまり、勾配が大きいため、形成される強風軸の風速も大きくなる。
あくまで現段階の感覚的なものから理由を考えてみましたが、冬が過ぎ、今シーズンの総括が出たらまた振り返ってみたいと考えています。とはいえ、もし本当に南からの暖気域が広いとしたら、それはやはり温暖化が一因なのでしょうか。過去の悪天予想図など見比べて、何か分かったら教えて頂ければと思います。
明日は大寒、一年で寒さの一番厳しくなる時期ですが、一方で日が少しずつ長くなっているのも感じます。何時までも冬の最中ではない、と思ってしまうのは、ちょっと気が早いですね。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。
千歳の雪
今年は千歳の雪がなかなかスゴイ
この 1,2 年、(実際にはどうなのか分かりませんが)千歳の雪はどちらかというと少なめ、あるいは、少なくとも航空機の運航に多大な影響が及ぶほどだったことは稀、というのが現場の肌感覚でした。もちろん、雪がないわけでは決してありません。ですが、影響を受けた場合がそれほどではなかったため、何となく少ない、これも温暖化と影響があるのだろうか、等と話したものでした。
しかし、まだ全く終わってはいませんが、この冬、少なくとも先月クリスマス時分以降の雪の降り方は、正直半端ない気がします。新千歳航空測候所では、今月に入ってから、まだ 16 日なのですが、すでに 3 回大雪に関する気象速報を発表しています。
新千歳空港の降雪特性
新千歳空港は、札幌をはじめとする北海道への玄関口ですが、札幌で大雪だからといって、千歳も大雪となるとは限りません。むしろ、札幌からそう遠くないにもかかわらず、雪は少なめです。札幌は日本海側の気象傾向を持つと言えますが、千歳は山で少なからず遮られているため、太平洋側の気象特性をも併せ持ちます。そのため、札幌とは雪の降る場合の傾向が異なります。だからこそ、自衛隊も基地を置き、また民間飛行場の地として選ばれているもと言えます。
とはいえ、Google map 等で地形を眺めていると、千歳で雪が降るパターンが何となく見えてきます。現場での経験則としてよく言われているのは、次の 2 つのパターンです。
① 風向が北西の場合で、石狩湾からの雪雲が札幌市を通過し、流れ込んでくる
② 風向が南寄りの場合で、海からの風が地形で収束する
つまり、千歳の雪も、地形の影響を大きく受けた地域特性と言えます。では、この経験則を体系的に扱ったものはあるのでしょうか。ちょっと検索をかけてみました。
『千歳空港における 6 時間降雪量の特性について』
観測データや気象情報を除くと、上の名前の論文が一番最初にヒットしたのですが、この論文は、千歳航空測候所の方が執筆した 1977 年(!)のものでした。
https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1977/1977_05_0265.pdf
半世紀にはならないまでも、45 年前の論文が検索上位に出てくるということは、伝説の論文なのかと思い、拝見しました。現在にこの結果がそのまま当てはまるかどうかは分かりませんが、論文の示唆する知見は、ざっくり言えば以下の通りでした。
<知見①> 降雪量は 1 月が最多、次いで 2 月、12 月
<知見②> 降雪量最多は、850 hPa の風向が 310 ~ 340°、風速 30 kts 以上の場合。つまり、石狩湾から大気が流入し、風速が大きいため、水蒸気量が多く、地域的収束も大きく、多雪となる。
<知見③> 次いで、風向が南東~南寄りの場合で、確率的には、最多の場合の半分程度。3 番目に、850 hPa の風向が 310 ~ 340°、風速 20 ~ 30 kts の場合。確率的には、最多の 1/4 程度。
ん-、まさに現場の経験則そのものです。変化の激しいこのご時世に、半世紀近く有効な経験則というのも、なかなか有難いものです。
現時点における今シーズンの傾向
以上のように、千歳で多雪となる場合には、北西風が強い場合と、南東~南寄りの風となる場合がありますが、現時点ではそのどちらの場合も、よく起きています。それは、2 つの理由によるのでは、と考えています。
① 西高東低の気圧傾度が大きい。低気圧が例年以上に発達するためか、結果として、気圧傾度が大きくなる。 → 北西の風が強くなりやすい。(1/1, 13-14 のパターン)
② 津軽海峡から北海道中心部が低気圧の通り道になっている。(昨シーズンは、どちらかと言えば、北海中央から北部を通過しているものが多め) → 南の海上から湿った雲が流れ込みやすい。(1/11-12 のパターン)
まあ、あくまでざっくりですが、昨年や例年目にする地上天気図と比べると、今シーズンは、現段階ではそんな傾向があるように感じたりもします。
今週 20 日には大寒、最も寒さの厳しい時期を迎えます。ウイルス、気象の影響のみならず、火山による津波の影響にも目配りしなければいけない世の中になっているみたいですね。
本日も最後までお付き合いどうもありがとうございました。